塩化ベンザルコニウム(読み)えんかべんざるこにうむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ベンザルコニウム」の意味・わかりやすい解説

塩化ベンザルコニウム
えんかべんざるこにうむ
benzalkonium chloride

皮膚殺菌消毒剤逆性せっけん(陽性せっけん)ともいわれる第4級アンモニウム系殺菌消毒剤の一つで、タンパク凝固作用と界面活性作用によって消毒効果を現す。普通のせっけんが陰イオンによるのに対し、これは陽イオンに起因するもので、10%液として市販され、無色ないし淡黄色澄明な液で、わずかに特異臭があり、振ると泡だつ。通常、水で希釈して用いる。手指の消毒には0.05~0.1%、手術部位の消毒には0.1%、粘膜には0.01~0.05%、腟(ちつ)、膀胱(ぼうこう)、尿道の消毒には0.005%、創口の消毒や皮膚疾患には0.01%液を塗布する。器具器械類の消毒にも使われるが、せっけん、血液、膿(うみ)など有機物(陰性荷電物)の存在で殺菌力が低下、または不活化する。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「塩化ベンザルコニウム」の解説

塩化ベンザルコニウム
エンカベンザルコニウム
benzalkonium chloride

benzyldimethyl(tetradecyl)ammonium chloride.C23H42ClN(368.05).[C6H5CH2N(CH3)2C14H29]Cl.テトラデシルアミンをメチル化してジメチルテトラデシルアミンとし,これを塩化ベンジルと反応させて製造する.白色~黄白色の粉末あるいは無色~淡黄色のゼラチン状の小片,ゼリー様の流動体または塊.水,エタノール,アセトン,ベンゼンに易溶,エーテルに不溶.室温で長期安定である.陽イオン界面活性剤の一つ.第四級アンモニウム系殺菌消毒薬.芽胞のない細菌,かび類に抗菌作用を示す.殺菌剤,消毒剤,防腐剤,きず口の洗浄などに用いられる.また,微量金属イオンの比色分析における感度向上剤,コロイド滴定における正電荷コロイドなど,分析用試薬としても用途が広い.[CAS 139-08-2][別用語参照]カチオン界面活性剤

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「塩化ベンザルコニウム」の解説

塩化ベンザルコニウム


 ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド,ゼフィラミンともいう.界面活性剤,殺菌剤,消毒剤などとして広く使われている.アルキル基はC8H17からC18H37

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の塩化ベンザルコニウムの言及

【殺菌剤】より

…そこで,ときに特別な欠陥があるかのような批判がされるが,脱臭効果もあるので,使い方によっては便利な殺菌剤である。主要な逆性セッケンには塩化ベンザルコニウムと塩化ベンゼトニウムが知られている。逆性セッケンと同系統の殺菌剤に両性界面活性剤があり,アミノエチルグリシンがまったく同様に用いられるが,結核菌に効果があるという長所をももっている。…

※「塩化ベンザルコニウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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