報時(読み)ほうじ

精選版 日本国語大辞典 「報時」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じ【報時】

〘名〙 標準時刻を公示すること。また、その機構および事業。日本では現在、総務省通信総合研究所がJJYのコールサインで発信している。時報。

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デジタル大辞泉 「報時」の意味・読み・例文・類語

ほう‐じ【報時】

標準時刻を知らせること。日本では、情報通信研究機構標準電波電話回線インターネットNTPサーバーなどを利用して日本標準時を供給している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「報時」の意味・わかりやすい解説

報時
ほうじ

音、光、電気、電波などの手段により一般に時刻を知らせること。もっとも早い段階での方法は鐘や太鼓の音によるものであった。日本の寺院の鐘は元来勤行(ごんぎょう)のためのものであったが、時を知らせる機能を果たした。西洋の時計塔の鐘の音も時を広く知らせるものである。

 日本では1871年(明治4)9月9日以来、東京の宮城内本丸において正午に大砲1発を放って報時とすることが太政(だじょう)官達453号で定められた。午砲による報時は陸軍省が担当した。陸軍省の予算緊縮で1922年(大正11)9月15日これが廃止され、その後は東京市が受け継いで午砲を発したが、1929年(昭和4)5月1日からはサイレンにかわった。各地方都市も1879年3月から内務省の許可を得て午砲による報時を行い、のちにサイレンにかえたが、ラジオやテレビの普及で放送局の報時にかわった。

 航海中の船舶の位置は天体観測により決定するが、そのためには正確な時刻を知る必要がある。第二次世界大戦以前には少なくとも遠洋航海する船舶はクロノメーターを積載して、グリニジ平均時を得て、正確な時刻を保持した。グリニジ平均時の報時は現在は無線報時によるが、それ以前、とくに船舶に対しては報時球(時球)によって行われた。報時球とは、港湾埠頭(ふとう)に高くつるした球を正午に落下させ、その瞬時を観測して時刻を知る装置である。1903年(明治36)に横浜、神戸に報時球が置かれ、その後、福岡県門司(もじ)、長崎、大阪などの各港でも行われた。無線電信発明により報時球の利用価値がなくなり、第二次世界大戦以後姿を消した。無線報時は1905年アメリカで始められ、日本でも1911年から銚子(ちょうし)無線電信局(千葉県)を通じて、1916年には船橋無線電信局(千葉県)を通じて行われた。1932年からは学用報時が、1938年には短波報時が始まった。いずれも定時に報時信号を発するが、第二次世界大戦後は毎秒を送信するものになり、1948年(昭和23)に千葉県の検見川(けみがわ)にある検見川無線送信所から長波報時が、翌年には東京の小金井市にある郵政省電波研究所(現、情報通信研究機構)からJJYのコールサイン、2.5、5、10、15メガヘルツの周波数で昼夜連続分秒報時が始まり、その後の改良が加えられて今日に至っている。なお、短波報時は2001年(平成13)3月末で廃止され、現在は長波報時の電波のみが発射されている。

 現在の報時は標準電波報時形式で、その報時信号は時刻としては世界時を示し、時間としては暦表時の秒を刻むものである。NHKは標準電波を受信し、自己の時計を補正して時報を放送している。

[渡辺敏夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「報時」の意味・わかりやすい解説

報時 (ほうじ)
time service

標準時を広く通報すること,または通報するための一連のシステムをいう。日本の報時について昔にさかのぼれば,旧幕時代には鐘や太鼓などが局地的に使われていたが,1871年(明治4)から皇居内の本丸において号砲による正午報時が開始され,その後79年,地方においても正午砲の実施が許可された。全国電信局へ時刻を通報するため電話線を通じて報時が開始されたのは88年のことである。報時信号は東京天文台から発信された。これが有線報時の始まりである。1902年には横浜および神戸港で報時球による正午報時が開始され,やがてこれが門司,長崎,大阪港へと広がった。12年東京天文台から報時信号を有線で銚子無線電信局へ送り,ここから船舶向けの電波報時が放送され始めた。これが無線報時の始まりである。38年にはさらに船橋局からも放送されるようになった。その後無線報時は報時の大勢を占めるに至り,幾多の変遷を経て今日に至っている。

 無線報時には,波長別に長波無線報時,短波無線報時があり,また発射方式別に定時報時,連続報時(標準電波報時)などがある。現在はこの標準電波報時が主流となっている。日本のJJYはこれに当たる。テレビジョンやラジオの時報は,各放送局がJJYを受信して較正した自局の標準時計を基に報時されている。なお,将来は人工衛星に積んだ標準時計から一般向けに報時信号を放送しようという計画もある。
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百科事典マイペディア 「報時」の意味・わかりやすい解説

報時【ほうじ】

標準時を広く通報すること。718年(養老2年)制定の養老令には鐘鼓を打って時を知らせるとの記載があり,927年撰の《延喜式》からも,太鼓,鐘によって時刻を知らせていたことがわかる。さらにずっと下って江戸時代には,江戸城内では太鼓,市中では初め本石町,後にはほかに浅草,上野,芝など数ヵ所で鐘を打って時を知らせた。1871年(明治4年)からは,大砲を打って正午を知らせる制度(ドン)が東京で始まり,のち各師団所在地でも行われるようになった。東京天文台では1912年電信線を利用して報時信号を銚子無線電信局へ送り,ここから電波で海上の船舶へ知らせたが,これが無線報時の始まりで,現在では標準電波による無線報時が主流となっている。
→関連項目時刻無線報時

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「報時」の意味・わかりやすい解説

報時
ほうじ
time signal

電波によって正確な時刻を通報すること。定時報時と標準電波報時とがある。前者は毎日定時に秒信号を送信する。後者は連続的に標準周波数の搬送波を発射し,高度の時計比較や周波数比較に利用される。現在,日本では定時報時は行なわれておらず,標準電波報時が情報通信研究機構 (東京都小金井市) の標準に基づいて発射され,国立天文台が監視管理している。報時は 1972年から国際的に採用された協定世界時を基準とし,原子時計を仲介に,誤差は 1000分の1秒以内に保たれるようになっているが,時刻の最終決定はパリにある国際中央報時局によって1年後に行なわれる。なお現在テレビ,ラジオなどで行なっている時報は,科学技術用の報時とは区別するが,二次報時ともいい,その誤差は現在一般に 0.1秒以下とみてよい。

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