堪能(読み)たんのう

精選版 日本国語大辞典 「堪能」の意味・読み・例文・類語

たん‐のう【堪能・堪納ナフ・湛能】

〘名〙
[一] (「たんぬ(足━)」の変化した語。「堪能」「堪納」「湛能」はあて字)
① (━する) 満足すること。十分に飽き足りること。
※虎寛本狂言・悪太郎(室町末‐近世初)「しはい亭主かな、人に酒を盛るならば、たんのうする程振舞はせいで」
② (━する) 気分を晴らすこと。気の済むこと。また、なぐさめること。納得させること。
浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)中「せめてのことに様子をかたり、たんのうさせてたべかし」
[二] (形動) (「たん」は「堪」の慣用音) 才能にすぐれ、その道に深く通じていること。習熟していること。また、その人。古くは「かんのう」。→堪能(かんのう)②。
※興津彌五右衛門の遺書(1913)〈森鴎外〉「旁(かたがた)歌道茶事迄も堪能(タンノウ)に為渡(わたらせ)らるるが」
[語誌](1)平安後期の「観智院本名義抄」に載っている「たんぬ(足━)」は、中世後期になると抄物や「日葡辞書」に「する」を伴った形で使われており、一語化したと見られる。この「たんぬ(する)」は江戸時代に入ると、「たんの(する)」の形に変化し、更に長音化し「たんのう(する)」となった。江戸中期の「志不可起」には「たんなふ」の見出しがあり、「足(た)んぬ」との関わりが述べられている。
(2)「堪能」は、漢語としてはカンノウと読み、その道に深く通じていることを表わす。「堪」にはタンの音はなく、「湛」にタンがあることからの誤用による当て字と思われる。

かん‐のう【堪能】

〘名〙
仏語。よくものに堪える能力。〔大乗起信論
② (形動) (転じて)才能にすぐれ、その道に深く通じていること。また、その人。上手(じょうず)。→堪能(たんのう)
三代格‐三・承和四年(837)八月五日「但其僧不年臘堪能者
※浄瑠璃・新うすゆき物語(1741)上「園辺左衛門は、能狂言に堪能(カンノウ)のよし聞伝へ」 〔宋書‐明帝紀〕
[語誌]→「たんのう(堪能)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「堪能」の意味・読み・例文・類語

たん‐のう【堪能】

[名](スル)《「た(足)んぬ」の音変化。「堪能」は当て字》
十分に満足すること。「おいしい料理を堪能する」
気が済むこと。納得すること。
「せめてのことに様子を語り、―させてべかし」〈浄・五枚羽子板〉
[形動][文][ナリ]に「堪能」の字が当てられ「かんのう(堪能)」と混同されてできたもの》技芸学問などにすぐれているさま。「英会話に堪能な社員」
[類語]楽しむ満喫興ずる享受享楽エンジョイ興がる・興を添える・興趣が募る・興に入る興に乗る歓を尽くす感興歓楽逸楽安逸交歓合歓満ち足りる足る満足満悦充足飽満自足自得会心・充足感・充実感・自己満足本望心行く安住する・安んずる甘んずる十分十全嬉しい楽しい面白い喜ばしい喜び愉快痛快結構喜悦有頂天納得慊焉けんえん三平思わしい上機嫌ご機嫌おんの字足りる足る舞い上がる満たす気を良くする溜飲りゅういんを下げる言うことなし気に意に適ううきうきうはうはわくわくいそいそぞくぞく得手特技専売特許上手得意売り物十八番おはこお家芸お株お手の物達者巧者得手物有能器用多才うまたく巧妙潰しが利くくする腕が立つ敏腕辣腕腕利き腕こき腕っこき手練てだれ手利き名人達人名手妙手エキスパート巨星巨匠名匠名工大家たいか権威第一人者泰斗たいと耆宿きしゅく大御所おおごしょオーソリティー巧手怪腕凄腕腕達者

かん‐のう【堪能】

[名・形動]
仏語。よくたえ忍ぶ能力。
深くその道に通じていること。また、そのような人や、そのさま。たんのう。
和歌能楽に―なところから」〈藤村夜明け前
[類語]上手楽しむ得意満足

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「堪能」の読み・字形・画数・意味

【堪能】かんのう・たんのう

才能がある。〔顔氏家訓勉学〕此(かく)の如き賢、~以外は(おほむ)ね多く田野の人なり。辭鄙陋、風操蚩拙(しせつ)、相ひ與(とも)に專固にして、堪能する無し。

字通「堪」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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