堪忍(読み)かんにん

精選版 日本国語大辞典 「堪忍」の意味・読み・例文・類語

かん‐にん【堪忍】

〘名〙
① 不利な状況にあって堪え忍ぶこと。こらえること。がまんすること。身体的苦痛や苦しい境遇に堪えることをいう。
※中右記‐天仁元年(1108)一二月一一日「今夜北風大吹、飛雪紛々、寒気入骨、不堪忍
太平記(14C後)一九「将軍、京都には、一日も堪忍(カンニン)し給はじと覚えしを」
② 怒りをこらえて、他人のあやまちを許すこと。勘弁
※親長卿記別記‐長享三年(1489)六月二九日「守護改押領、依在国之、父子堪忍者也」
※虎明本狂言・武悪(室町末‐近世初)「涯分かんにんしたれ共、此度はこらゆる事がならぬ程に」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「かわいいもかわいらしいもかわいそふだも、同(おんな)じことじゃアありませんかへ。そんなら私(わちき)がわりいから、堪忍(カンニン)しておくんなさいナ」 〔魏書‐李洪之伝〕
③ 扶助料の意の「堪忍分」を受けていること。また、その人。客分。
※康富記‐応永二五年(1418)八月五日「今暁兵衛尉尚盛〈兵衛五郎〉卒去〈略〉。譜代堪忍之者也」
④ やっと生活していること。また、その程度の収入。生活のための費用。最低の生活費。
大乗院寺社雑事記‐応仁二年(1468)閏一〇月二六日「以反米器物十石分来月可進上〈略〉御家撲等勘忍御用也云々」
⑤ (sahā 「娑婆」の訳語。「苦難に堪え忍ばなければならない世界」の意) この世のこと。〔法華経玄賛‐二本

たえ‐しの・ぶ たへ‥【堪忍】

〘他バ五(四)〙
① つらいことをこらえ辛抱する。つらさや苦しさをこらえる。がまんする。
※百座法談(1110)六月五日「忍辱仙としてあまたたへしのび給しも」
② 切実に思う。非常になつかしく思う。
浄瑠璃・頼光跡目論(1661‐73頃)四「千家塩竈をたへしのび」

か‐に【堪忍】

〘名〙 「かんにん(堪忍)」の変化した語。
洒落本・妓娼子(1818‐30)上「あれさ、かにしておくんなんし」

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デジタル大辞泉 「堪忍」の意味・読み・例文・類語

かん‐にん【堪忍】

[名](スル)
怒りを抑えて、人の過ちを許すこと。勘弁。「悪かった、堪忍してくれ」
肉体的な痛みや苦しい境遇などをじっとこらえること。我慢すること。忍耐
かつ力を尽し且―して時節を待つ可きなり」〈福沢学問のすゝめ
[類語]承知容赦許可認可許諾承認認許允許いんきょ允可いんか容認許容聴許裁許免許公許官許許しオーケーライセンス勘弁裁可特許宥恕黙許批准寛恕海容目こぼし見て見ぬ振り(―する)許す認める見逃す見過ごす大目に見る目をつぶる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「堪忍」の読み・字形・画数・意味

【堪忍】かんにん

がまんする。〔魏書、酷吏、李洪之伝〕洪之、志性慷、堪する多し。疹疾灸療するに、(もぐさ)圍將(ほとん)ど二寸、首足十餘處、一時(とも)に下すも、言笑すること自たり。

字通「堪」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の堪忍の言及

【娑婆】より

…それゆえ,娑婆は正しくは娑婆世界Sahā‐lokadhātuである。一方,これとは別に,堪忍(たんにん),能忍とも,雑会(ぞうえ)とも訳されている。前2者は原語のサハーを〈堪えるsah〉という動詞からつくられた語と解したためであり,後者はサハーとはまったく別の〈集会sabhā〉が原語であると解したためである。…

※「堪忍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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