(読み)うずたかい

精選版 日本国語大辞典 「堆」の意味・読み・例文・類語

うず‐たか・い うづ‥【堆】

〘形口〙 うづたか・し 〘形ク〙 (「うずだかい」「うつだかい」とも。古くは「うつたかし」か)
① 盛り上がって高い。
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「堆(ウツタカキ)阜高(をか)を下(くだ)して」
※宇治拾遺(1221頃)三「物は見えねど、うづたかく、ふたおほはれ」
気品がある。高貴である。また、非常にすぐれている。
太平記(14C後)三二「玉扆(い)の座に粧を堆(ウズダカ)くして」
浄瑠璃・多田院開帳(1695‐96頃)一「つねづねよりも御けしき世にうづだかうおがまれ給ふ」
③ 高慢である。えらそうである。
※玉塵抄(1563)二一「京と云てうつたかう云えども」
政談(1727頃)三「御老中、若老中、番頭等も殊外うす高く成たり」
うずたか‐さ
〘名〙

うつ【堆】

語素〙 積みあげられたさまをいう語。
書紀(720)雄略一五年「公仍りて百八十種の勝を領率ゐて、庸調の絹縑を奉献りて朝庭に充積む。因りて姓を賜ひて禹豆麻佐(ウツまさ)と云ふ 一に云はく禹豆母利麻佐(ウツもりまさ)といへるは、皆盈て積める貌なり」 〔観智院本名義抄(1241)〕

たい【堆】

〘名〙
① うず高く積もっていること。また、そのもの。
雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上「砂礫堆(タヰ)を成して車輪を没し」 〔司馬相如‐上林賦〕
② 海洋中の海底の高まり。好漁場となることが多いが、州(す)や礁よりも深いため航海の障害とはならない。日本近海では大和堆武蔵堆が有名。バンク

にお にほ【堆】

〘名〙 刈稲円錐形に高く積み上げたもの。稲叢(いなむら)。稲堆(いなにお)。《季・秋》
高野山文書‐(年月日未詳)・氏名未詳書状「いねをはみたしつみにして、にをにうたせられ候へく候」

うず‐だか うづ‥【堆】

〘形動〙 高く盛り上がっているさま。
古今著聞集(1254)一八「銀の鉢の、口一尺五六寸ばかりなるに、水飯をうづだかにもりて」

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デジタル大辞泉 「堆」の意味・読み・例文・類語

たい【堆】[漢字項目]

常用漢字] [音]タイ(呉)(漢) ツイ(唐) [訓]うずたかい
タイ〉高く積み上げる。うずたかい。「堆積堆肥
〈ツイ〉いくつも重ねる。「堆紅ついこう堆朱

たい【堆】

1か所にうず高く積もっていること。また、そのもの。
「大なる其葉枯れ乾き落ちて、―をなす」〈蘆花自然と人生
海底で、平らな頂をもつ隆起部。プランクトンが多く好漁場となる。北海道天塩沖の武蔵堆、能登半島沖の大和堆など。バンク。

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改訂新版 世界大百科事典 「堆」の意味・わかりやすい解説

堆 (たい)
bank

比較的浅い海底の高まりで,海上航行には十分な深さを有するもの。バンクともいう。海底物質は岩でも堆積物でもよい。普通は大陸棚にある浅所に用い,さらに沖合にある約200m以深の孤立した高まりは海山または海丘と呼ぶが,厳密な定義はない。大洋中の200m以浅の高まりを大洋堆ということがある。堆では湧昇流がおこりやすく好漁場となるので,古くから漁民によって呼名がつけられている。日本の海図ではこうした慣習名を図載している。すなわち出シ,グリ,ソワイ,ゾワイ,ソワ,曾根,バエ(碆),ハエ,シ(沚),岩,石,根,瀬,ビラシ,ツガイ(喰合),アサリ,モ(藻),モタレ,ヤマ(山),イソ(磯),場などの異称がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「堆」の意味・わかりやすい解説


たい
bank

大陸棚の上にある孤立した高まりの一種。厳密には、頂上は浅いが船の航行には差し支えないものをいう。頂上の深さが20メートル以下で船の航行に危険がある場合には、底質が岩盤のものを礁(しょう)、岩盤でないものを瀬(せ)、と区別している。しかし、栄養塩に富んだ海底付近の海水が高まりに沿って湧(わ)き上がり、プランクトンが増殖し好漁場となるため漁業者の関心が高く、昔からいろいろな名が残っているので、厳密に区別されていない。北海道の日本海側、天塩(てしお)の沖にある武蔵堆(むさしたい)は、大陸棚にある最浅点31メートルの堆であるが、能登(のと)半島の沖にある大和堆(やまとたい)、北大和堆は深海底からそびえ、厳密に定義すれば堆とはいえない。

[安井 正]

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百科事典マイペディア 「堆」の意味・わかりやすい解説

堆【たい】

大陸棚または島棚の上にあり航海に危険のない水深を有する海底の隆起。大洋底からそびえるものは大洋堆。成因には火山性,地質構造によるもの,沈没サンゴ礁などがある。日本近海で漁師が瀬,礁,くり,はえ(波石)などとも呼ぶ。海流変化に富み好漁場となるものが多い。日本海の大和堆武蔵堆など。
→関連項目海底地形

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【海底地形】より

…地形は地球内部に起因する内力(構造運動,火山活動など)により生じ,起伏を大にする。一方,太陽エネルギーと地球重力に起因する外力(浸食,堆積)により地形は破壊され起伏を減少していく。陸上では河川,波浪,氷河,風などの浸食と堆積の作用により複雑な地形を形成するが,海底ではいったん生じた地形は,浅海以外ではあまり浸食を受けず,むしろ緩慢な堆積作用によって埋積されていくだけであるから,保存されやすい。…

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