執権(読み)シッケン

デジタル大辞泉 「執権」の意味・読み・例文・類語

しっ‐けん【執権】

政治の実権を握ること。また、その人。
院政時代院の庁の長官の称。
鎌倉幕府の職名。幕政を統轄した最高の職。第3代将軍源実朝のとき北条時政が就任し、以後、北条氏が世襲した。
室町時代管領かんれいのこと。また、主家を補佐するところから、諸大名の家臣の称。

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精選版 日本国語大辞典 「執権」の意味・読み・例文・類語

しっ‐けん【執権】

〘名〙
① 政権をとること、権勢をふるうこと。また、その人。
※袋草紙(1157‐59頃)上「在外戚、執権御座つるに」 〔漢書‐魏相伝〕
② 院中雑務執行の責任者。院別当のうちから一人を選んで任じた。
※葉黄記‐寛元四年(1246)正月二九日「然而先例或他人雖執事、器量之者一人又奉執権。今此議也」
朝廷の記録所の弁。
※玉葉‐文治三年(1187)二月一七日「記録所弁事、延久、保元、共蔵人弁為執権
④ 鎌倉時代、幕府の政所(まんどころ)の長官。将軍を補佐し、政務を統轄した最高の職。将軍源実朝のとき北条時政が任ぜられて以後は、北条氏が世襲した。
吾妻鏡‐建仁三年(1203)一〇月九日「次第故実、執権悉奉之云々」
⑤ 室町時代、管領の別称。また、主家を補佐するところから諸大名の家臣が称することもあった。
鎌倉殿中以下年中行事(1454か)「管領執権と云事、毎々諸人申条不然〈略〉管領一人をば執権と申べき也」
⑥ 江戸時代、大名・小名の家臣で、家の事務を総轄した職。家老。
浄瑠璃・赤染衛門栄華物語(1680)二「家のしっけん小玉の彌忠太聞もあへず」

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百科事典マイペディア 「執権」の意味・わかりやすい解説

執権【しっけん】

鎌倉幕府の職名。将軍の後見役を兼ね,軍事,司法,政務など幕政全体を総攬(そうらん)する。政所(まんどころ)別当のうち1名を任じ,大江広元がその初めともいうが,1203年北条時政が源実朝を将軍に立てた時に就任したのが最初。1213年和田義盛を滅ぼして侍所(さむらいどころ)・政所両別当職を兼任した北条義時は,事実上幕政の最高権力者となり,以後北条氏が独占的に執権の地位を世襲した。執権はその補佐官たる連署とともに幕政を統轄し,幕府の主要な公文書はこの両者の名前によって発行された。
→関連項目内管領金沢貞顕関東御領株河駅下知状施行状執権政治執事摂家将軍平頼綱得宗二月騒動藤原頼経北条氏北条貞時北条高時北条時房北条時宗北条時頼北条泰時和田合戦

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改訂新版 世界大百科事典 「執権」の意味・わかりやすい解説

執権 (しっけん)

鎌倉幕府の職名。本来は権力を握ること。職名としてはまず朝廷の記録所の勾当の別称。この制は1069年(延久1)の記録所の設置にさかのぼるが,勾当を執権と称したことが確認できるのは1186年(文治2)以後である。また蔵人の中でとくに蔵人頭を執権職事(しつけんのしきじ)ということもあった。次に院庁では別当の中で器量の者1名を執権に任じ,院中雑務の責任者とした。この制は後鳥羽院政期に始まり,臨時の職であった。もっとも有名な鎌倉幕府の執権は,同じころに置かれ,院庁の執権に似ている。鎌倉殿(将軍)の政所別当の中の1名を執権に任じたもので,大江広元を初代執権とする説もあるが,正式には1203年(建仁3)北条時政が将軍源頼家を廃して実朝を立てた際に政所別当となり,執権となったのが最初である。執権は〈御後見〉〈政務ノ御代官〉などといわれ,政所別当として将軍家の家司であり,将軍を補佐して政務をすべる職であるが,将軍は名目にすぎず,実質的には執権が幕府の実権を握る最高の要職で,北条氏が世襲した。13年(建保1)和田義盛の滅亡後,執権北条義時は和田氏が持っていた侍所別当をも奪い,北条氏は政所・侍所別当を独占するようになった。25年(嘉禄1)執権泰時は連署を置いたが,当時執権,連署はともに執権と呼ばれたから,これ以来執権が2名になったものとみてよく,関東下知状,御教書などの公文書は,両執権の名で発布されるようになった。執権は最初は北条氏の家督(得宗)に伝えられたが,56年(康元1)北条時頼が長時に執権を譲って以来,得宗以外のものも執権に就任するようになった。しかし時頼は執権辞任後も実権を握っていたから,執権と得宗とは分離し,幕府権力の根源は執権よりも得宗に置かれることになった。1246年(寛元4)後嵯峨上皇が院政を始めて以来,従来は臨時であった院庁の執権が常置となったのは,幕府の制度の影響であろう。なお室町幕府の管領をも執権といい,後には諸大名の重臣をも執権といった。
執権政治
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「執権」の意味・わかりやすい解説

執権
しっけん

鎌倉幕府の職名で、将軍を補佐し政務を総轄した。幕府成立期には政所(まんどころ)の別当(べっとう)大江広元(おおえのひろもと)のことを執権といったが、3代将軍源実朝(さねとも)の時代に北条時政(ほうじょうときまさ)も政所別当の地位について2人となり、時政の権力が増大するとともに執権と称して政務の実権を掌握するに至った。時政のあと北条義時(よしとき)がその地位を継いだが、1213年(建保1)に侍所(さむらいどころ)別当であった和田義盛(よしもり)を滅亡させ、政所と侍所の両別当を兼ねて幕政を統轄するに及び、将軍はまったく名目的な存在となった。以後、北条氏がこの地位を世襲し、連署(れんしょ)、評定衆(ひょうじょうしゅう)、引付衆(ひきつけしゅう)らを率いて幕府の実権を掌握し、北条氏の独裁体制を確立した。この執権北条氏の独裁的な体制を執権政治という。

[田中文英]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「執権」の解説

執権
しっけん

鎌倉幕府の職名。初代政所(まんどころ)別当の大江広元が執権とよばれたが,ふつう1203年(建仁3)政所別当となった北条時政が執権の初代とされる。13年(建保元)侍所(さむらいどころ)別当の和田義盛(よしもり)が滅亡すると,執権北条義時は侍所別当を兼ね,以後執権は政所・侍所の両別当を兼務する役職となった。25年(嘉禄元)の連署(れんしょ)の設置は,複数執権制の創設といえる。執権・連署は幕府の最重要職であり,嫡宗である得宗家(とくそうけ)をはじめとする北条氏の有力諸家によって独占された。だが56年(康元元)得宗北条時頼が一門赤橋家の北条長時に執権を譲って以来,幕政の実権はしだいに執権から得宗に移り,執権の地位は相対的に低下した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「執権」の意味・わかりやすい解説

執権
しっけん

政務を執行する者。 (1) 朝廷の記録所職員のうちの弁官の称。 (2) 院庁 (いんのちょう) の別当のうち常時事務を主宰する者。 (3) 鎌倉幕府で将軍を補佐し,幕政を統轄した職。源頼朝の死後,北条氏が台頭し義時が侍所別当和田義盛を滅ぼして,政所,侍所の両別当職を兼ね,幕府の実権を握って執権と称し,以後北条氏が世襲した。鎌倉幕府の事実上の最高責任者。 (→執権政治 )  

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旺文社日本史事典 三訂版 「執権」の解説

執権
しっけん

鎌倉幕府で将軍を補佐して幕政を統轄する職
鎌倉時代,初め政所 (まんどころ) 別当 (べつとう) を執権と称し,1203年北条時政が大江広元とともに別当となった。'13年侍所別当和田義盛を滅ぼしたのち,北条義時は政所・侍所の別当を兼任して幕政の主導権を握り,執権と称した。以後北条氏が世襲し,幕政を完全に掌握した。

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普及版 字通 「執権」の読み・字形・画数・意味

【執権】しつけん

執柄。

字通「執」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の執権の言及

【院司】より

…院事を総理する別当は,はじめ1~2名にすぎなかったが,しだいに員数が増え,ことに院政開始後は,公卿・殿上人が競って別当になることを望んだので,白河上皇の晩年には20人前後にも達した。これに対処して生まれたのが執行別当(のち執事)・年預別当で,さらに鎌倉時代以降は執権も置かれ,院中の庶政は執事・執権によって運営され,雑事は年預・庁年預(主典代が兼任)によって執行された。(3)の別納所は勅旨田の地子や封戸の納物を収納する所として重視され,主殿所は湯・灯油を供進し,掃部所は清掃・鋪設をつかさどり,薬殿は薬を供進し,仕所・召次所は仕丁を進退して雑役に従事し,御服所は装束を,細工所は車その他雑具を調進し,御厨子所・進物所は進膳の事をつかさどった。…

【探題】より

…もともとは前記の仏教用語に発するもので,その論題の判定機能のゆえに幕府の裁判担当者の職名に転じたとみなされている。鎌倉幕府では東国の執権・連署が探題と呼ばれ,また西国・九州を単位としてそれぞれ六波羅探題・鎮西探題が置かれたが,その職名は通称であって,正式の職名ではなかったようである。室町幕府では幕府や関東府の管領・執事が探題と呼ばれた例はなく,それ以外の広い地域の管領権を有する職についてのみ探題と呼ばれた。…

【北条時政】より

…鎌倉幕府の初代執権。時方の子。…

※「執権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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