朝日日本歴史人物事典 「坂東三津五郎(初代)」の解説
坂東三津五郎(初代)
生年:延享2(1745)
江戸時代中期の歌舞伎役者。俳名是業。屋号は代々大和屋。大坂の生まれ。初め竹田巳之助と名乗って大坂浜芝居の竹田座に出ていたが,明和3(1766)年初代坂東三八の養子となり,養父と共に江戸に下って坂東三津五郎と改め,立役として舞台に出る。たちまち頭角をあらわし,急速に人気を得て花形役者となり,安永6(1777)年の「将門冠初雪」の壬生忠見で「当座一」の評を得,安永9年刊の評判記には「此様にも急に上手にならるる物でござるか……何をせられてもよいよいとの評判,さりとはきようなお人」と賞された。容姿に優れ,和事を中心として役柄が広く,女形もできたが,口跡には浜芝居以来の臭味が残ったという。将来を嘱望されたが,位付けの上上吉を目前にして,惜しくも38歳で急死した。
(井草利夫)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報