地震雷火事親父(読み)じしんかみなりかじおやじ

精選版 日本国語大辞典 「地震雷火事親父」の意味・読み・例文・類語

じしん【地震】 雷(かみなり)火事(かじ)親父(おやじ)

世の中で恐ろしいものを順に並べた表現
思ひ出(1933)〈太宰治〉一「地震雷火事親爺、それ以上に怖い戦争が起ったなら」

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デジタル大辞泉 「地震雷火事親父」の意味・読み・例文・類語

地震じしんかみなり火事かじ親父おやじ

世間でたいへん恐ろしいとされているものを、その順に並べていう言葉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「地震雷火事親父」の解説

地震雷火事親父

世の中で怖いもの、あらがいようのないものを列挙したもの。おおむね恐ろしい順に並んでいる。

[使用例] 「もし戦争が起ったなら。」という題を与えられて、地震雷火事親爺、それ以上に怖い戦争が起ったなら先ず山の中へでも逃げ込もう、逃げるついでに先生をも誘おう、先生も人間、僕も人間、いくさの怖いのは同じであろう、と書いた[太宰治*思ひ出|1933]

[使用例] とよちゃんは、気味悪そうに黒い燃えがらを手のひらにのせて、「何にきくんですか、こんなもの……」「なにって……災難が来ないのさ」「どんな災難ですか」「そりゃあ、まあ……地震、かみなり、火事、おやじ……とか、さ」[沢村貞子*私の浅草|1976]

[解説] ただ名詞を羅列しただけのようですが、「地震、雷」と恐ろしい天災を並べ、後者頭韻のそろう「火事」を挙げています。ここまではまず異論のないところですが、最後に災害と直接関わりがなく意外性のある「親父」をもってきて、注意を引きます。しかし、たしかに怖いのは同じなので、軽いユーモアとともに、なるほどと思わせる構成です。「親父」も「火事」と脚韻を踏んでいるので、とても口調がよく、おのずから印象に残る表現といえるでしょう。
 この表現が収録されている最も古い文献は「尾張童遊集」(1831)なので、江戸後期に名古屋近辺の子どもたちが声をそろえて口ずさんでいたことになり、口調がよいのも納得できます。なお、「親父」は、名主などをさしたとする説もあります。親方親分に頭が上がらない時代だったので一理ある説のようですが、子どもたちはやはりわが家の「親父」を思い浮かべ、ユーモアを感じていたのではないでしょうか。

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