地球環境基金(読み)ちきゅうかんきょうききん(英語表記)Global Environment Facility

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地球環境基金」の意味・わかりやすい解説

地球環境基金
ちきゅうかんきょうききん
Global Environment Facility

略称GEF。開発途上国等が地球規模の環境問題に対応するために新たに負担する費用に対して、資金を供給することを目的に設立された国際的な基金。世界銀行(国際復興開発銀行)理事会の決議に基づき、1991年5月に第1回理事会が開かれ、わが国も含め30か国が参加して期間3年間(91年7月~94年6月)の実験的な取り組みがなされた。1992年の地球サミットでは、途上国の地球環境保全への取り組みに対する資金援助の仕組みとして、先進国側は、世界銀行、国連環境計画国連開発計画が管理をしているGEFに基金を積むことを提案したが、途上国側はGEFは先進国の代理組織であるとして、新組織の創設を要求して議論は紛糾した。その後、先の取り組みの経験などをふまえて、1994年3月に、組織の改組および期間3年間の増資が参加国会合において合意されている。基金の目標は、当初10億ドルであったが、当面20億SDR(IMF特別引出権)を目標としている。98年3月には、98年7月から4年間の活動のための資金を27億5000万ドルとすることが合意された。

 1996年4月までのプロジェクト資金供与割合の実績では、気候変動(40%)、生物多様性(36%)、国際水域(14%)、オゾン層減少(8%)などとなっている。

 これとは別に、わが国において「民間団体(NGO)の環境保全活動への資金の助成や、その他の支援を行い、環境保全活動へ向けた国民的運動の発展を図ることを目的として」、1993年(平成5)5月に環境事業団に地球環境基金(Japan Fund of Global Environment)が創設された。国が出資するほか、国民や企業等からも寄付を受ける。民間の寄付を含め約86億円が積み立てられ(1998年1月現在)、98年度は195団体に対し7億3000万円が提供された。

 国内外のNGOによる、とくに開発途上地域における環境保全活動を支援するが、わが国の財政基盤が弱く欧米のNGOに比して活動の規模や内容が不十分だと指摘されてきたので、今後の基金の充実と適切な運用が期待されている。

[植田和弘]

『毛利聡子著『NGOと地球環境ガバナンス』(1999・築地書館)』『ジョン・マコーミック著、石弘之、山口祐司訳『地球環境運動史』(1998・岩波書店)』『環境NGO活動研究会著『地球環境基金Q&A今、地球が危ない!』(1993・第一法規出版)』

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百科事典マイペディア 「地球環境基金」の意味・わかりやすい解説

地球環境基金【ちきゅうかんきょうききん】

環境保全に向けた国民的運動の展開を図るため,民間団体(NGO)に環境保全活動のための資金を助成するなどの支援事業を行う組織。地球環境問題に取り組むNGOの活動を支援する機運が高まり,1993年,環境事業団法の改正により環境事業団(2004年独立行政法人・環境再生保全機構に改組)に地球環境基金が設置された。地球環境基金は環境再生保全機構の中に設けられているが,助成金の交付などの基金業務を適正に運営するため有識者から成る地球環境基金運営委員会の指導を得て運営されている。地球環境基金はNGOの環境保全活動に対する資金助成のほか,環境保全活動に参加しようとする者を対象にした実践活動の研修やNGOの活動状況の情報提供,活動に参加する能力や希望を持つ人材に関するデータベースを構築し,一般の利用に供すること,主要国のNGO活動に対する支援制度の実情調査による基礎資料の充実などの振興事業も実施している。地球環境基金が2003年度に資金を助成した団体は218(うち海外団体13),海外助成案件計75(うち7割がアジア諸国),その総額は8億円である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地球環境基金」の意味・わかりやすい解説

地球環境基金
ちきゅうかんきょうききん
Global Environment Facility

略称 GEF。地球環境問題に関連した投資プロジェクト,技術援助および研究に対し無償資金などを供与するための基金。 1990年 11月に設立が基本的に合意され,91年から約3年間の試験的運営が開始された。運営は国連開発計画 UNDP,国連環境計画 UNEP,世界銀行 IBRDの3つの機関で行われ,(1) 地球温暖化の防止,(2) 国際水域汚染の防止,(3) 生物種の多様性の保全,(4) オゾン層の保護の4分野の地球環境問題に取組む開発途上国への支援を目的とする。 92年6月にリオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議 UNCEDによって,GEFは暫定的に気候変動枠組条約生物多様性条約およびアジェンダ 21の資金メカニズムとしての役割を果すことになった。同会議での試算によれば,環境に留意しながら途上国の開発を進めるためには年間 1250億ドルが必要だという。

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