地形図(読み)ちけいず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地形図」の意味・わかりやすい解説

地形図
ちけいず

土地の高低や起伏河川湖沼植生、土地の利用状況、交通路、都市その他の集落など、地表面上の自然・人工のすべてのものを均等に表現した地図一般図というが、そのうち、ある程度以上の詳しさをもった地図を地形図という。国土地理院発行の縮尺2万5000分の1の地形図や5万分の1の地形図は、その代表的なものである。そこでは各種の対象物が、縮尺の関係から取捨選択、総描(形や分布の特徴を保持しながら統合や形状の単純化などを行うこと)、転位(位置を最小限ずらして描くこと)などが行われてはいるものの、かなり詳細に表されている。縮尺5000分の1や2500分の1などの大縮尺になると、ほとんどすべての対象物が縮尺化したままの形で描き表される。すなわち、地形図であるためには、数万分の1以上の縮尺が必要である。2万5000分の1や5万分の1の地形図は、国土の全域を統一された規格・精度で覆うもので基本図といわれ、各方面に広く利用されている。5000分の1以上の大縮尺の地形図は、おもに調査・計画用に、国土地理院の国土基本図をはじめとして地方公共団体などでも作成されている。

[五條英司]

『武井正明著『地形図の読み方』(1988・三省堂)』『五百沢智也著『2万5千分の1図による最新地形図入門』(1989・山と渓谷社)』『大森八四郎著『最新地形図の本――地図の基礎から利用まで』(1991・国際地学協会)』『日本地図センター編・刊『地形図の手引き』(1995)』『帝国書院編集部編『新編コンターワーク――地形図学習の基礎』(1998・帝国書院)』『地図資料編纂会編『正式二万分一地形図集成』全8巻(2001~2003・柏書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地形図」の意味・わかりやすい解説

地形図
ちけいず
topographic map

地表の景観を縮尺の範囲内で可能なかぎり忠実に網羅して地図表現することを目的とした地図で,普通は 10万分の1以上の大きな縮尺の地図である。土地の起伏は等高線で表わし,河川,集落,交通線なども線または点的記号を用い,境界地名が表示されている。経緯線または距離方眼線を図郭として,領土全域を一定の区画単位に地図化してあり,張りつないで適宜の地域をおおえるように構成されていることが多い。国家的事業として,国の測量地図機関で統一地図図式に基づいて作成している。空中写真測量で作成する方法が標準的となっており,25万分の1以上の縮尺で世界の陸地のほぼ 80%が完成している。いろいろな地図の作成において,地形図は標準的な基図として用いられるので,最新性維持のための修正が要求される。地図投影法はユニバーサル横メルカトル図法が現在広く用いられているが,測量の基礎にする地球楕円体は,着手の事情の相違から,各国それぞれ独自の値が採用されている。日本では,明治年間に国家事業として開始し,1924年に5万分の1シリーズを完成し,80年代に2万 5000分の1シリーズが完成した。

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百科事典マイペディア 「地形図」の意味・わかりやすい解説

地形図【ちけいず】

土地の起伏を表現する地図。ふつうは地形だけでなく自然や文化施設を含めた土地の状態をも表示する一般図である。ふつう地形の表現には等高線を用いる。日本では全国をおおう基本地形図として2万5000分の1地図が国土地理院から発行され,そのほか,縮尺2500分の1のものから10万分の1くらいまでのものが作製されている。
→関連項目五万分の一地図地形測量地形模型

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精選版 日本国語大辞典 「地形図」の意味・読み・例文・類語

ちけい‐ず ‥ヅ【地形図】

〘名〙
① ある地域の土地のようすを表示した図。その土地の地形を示した図。
※中右記‐天永三年(1112)七月一二日「御社地形図先以使進覧殿下了」
② 地表の形態を正確に表示した地図。ふつう等高線・地名・集落・境界・水系・道路・鉄道などがしるされている。国土地理院発行の二万五〇〇〇分の一や五万分の一の地形図が代表的。陸図。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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デジタル大辞泉 「地形図」の意味・読み・例文・類語

ちけい‐ず〔‐ヅ〕【地形図】

地形を詳細に示す地図。山や川、道路・鉄道・集落なども含めた土地の状態を表し、ふつう、等高線で起伏を表す。

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世界大百科事典 第2版 「地形図」の意味・わかりやすい解説

ちけいず【地形図 topographic map】

縮尺の制約の許す範囲内で,できるかぎり詳細に地表の形象を明らかにすることを原則とした地図で,一般に縮尺2500分の1から10万分の1くらいのものを地形図と呼んでいる。地形図には地形,水系,交通施設,おもな建造物および集落,植生,基準点など地表の形態や地表に分布する事物が,縮尺に応じて縮小表現されており,さらに地名や境界などが記入されている。 地図は大別して一般図と主題図に分けられるが,地形図は一般図の代表的なものであり,かつ最も基本的な地図で,各種の調査や計画に使われるだけでなく,多くの主題図などの基図としても広く活用されている。

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世界大百科事典内の地形図の言及

【測量】より

…高さの測定にはこのほかに,経緯儀を用いる三角水準測量trigonometric levelingや,気圧計を用いる気圧測高barometric levelingがある。(7)平板測量plane table survey 平板,アリダードを主要器具として現地において地形図等を作成するものである。大縮尺の図を作成する細部の測量に広く用いられる。…

※「地形図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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