在家(仏教)(読み)ざいけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「在家(仏教)」の意味・わかりやすい解説

在家(仏教)
ざいけ

家にあって、自ら生計をたてて世俗生活をなすこと、またその人をいう。パーリ語のガハッタgahaha、サンスクリット語のグリハスタghasthaの訳。居家(きょけ)とも、また在家人、居士(こじ)、世人(せじん)ともいう。出家(しゅっけ)あるいは出家人、僧侶(そうりょ)、道人(どうにん)などに対する語。両者あわせて僧俗、道俗といわれるときの「俗」をさす。自分の生まれた家の苗字(みょうじ)をもち、所属する家庭あるいは一族の構成員として、その義務を果たし、また財産分与などの権利を享受する人が在家者である。在家者が仏教に帰依(きえ)し三帰五戒(さんきごかい)などの戒律を受けると優婆塞(うばそく)(男子信者)・優婆夷(うばい)(女子信者)とよばれ、仏弟子の四衆(また七衆)の一員となる。初期大乗仏教は在家者を中心とした宗教運動であるが、彼らは「善男子(ぜんなんし)・善女人(ぜんにょにん)」とよばれ、菩薩(ぼさつ)の自覚をもった人々であった。優れた在家菩薩としては維摩居士(ゆいまこじ)や勝鬘夫人(しょうまんぶにん)らがあげられる。

[阿部慈園]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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