(読み)ど

精選版 日本国語大辞典 「土」の意味・読み・例文・類語

ど【土】

[1] 〘名〙
① つち。土壌(どじょう)。〔書経‐禹貢〕
② 土地。大地。国土。領地。地方。場所。
※観智院本三宝絵(984)下「又彼仏は此土の衆生に大誓願あり。此土の衆生は彼仏に大因縁あり」
※高野本平家(13C前)二「嶋にも人まれなり。おのづから人はあれども、此土(ド)の人にも似ず。色黒うして牛の如し」 〔春秋左伝‐隠公一〇年〕
五行一つ。季節では土用、方位では中央、色では黄、天体の五星では土星にあたる。
神皇正統記(1339‐43)上「此神に木・火・土・金・水の五行の徳まします」 〔史記‐天官書〕
④ 「土曜」の略。古暦で、七曜の一つ。また、現今の暦で一週間の七番目。
※森鴎外日記‐明治三一年(1898)一月「一日(土)歳を観潮楼に迎ふ」
[2]
[一] 「土佐国」の略。
[二] 「トルコ(土耳古)」の略。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「土」の意味・読み・例文・類語

つち【土/地】

岩石が分解して粗い粉末になったもの。土壌。「花壇の―を入れ替える」
地球の陸地の表面。地面。大地。「故国の―を踏む」
「天」に対し、地上のこと。
「空から―へひと息にポーンと降り立つ雨の脚」〈柳虹・雨の脚〉
鳥の子紙の一。紙の原料となる植物繊維に泥土をまぜて製した下等な和紙。
(「犯土」「槌」「椎」とも書く)陰陽道おんようどうで、土公神どくじんのいる方角を犯して工事などをすることを忌むこと。また、その期間。暦の庚午から甲申までの15日間をいう。つちび。
人の容貌ようぼうの醜いことをたとえていう語。
「御前なる人は、まことに―などの心地ぞするを」〈・蜻蛉〉
地下じげのこと。
「―の帯刀たちはきの、歳二十ばかり、たけは一寸ばかりなり」〈落窪・一〉
[下接語]赤土あら合わせ土うわ置き土鹿沼かぬま壁土黒土肥え土しら底土たたき土作り土とこにがねば練り土はにへなけ土・盛り土焼き土焼け土せ土・用心土
[類語](1土壌土地大地壌土土砂赤土黒土緑土黄土凍土ローム粘土陶土はに壁土アンツーカー腐植土腐葉土シルト残土/(2大地
[補説]作品名別項。→

ど【土】[漢字項目]

[音](慣) (漢) [訓]つち
学習漢字]1年
〈ド〉
つち。「土塊土管土器土偶土砂どしゃ土壌土石土葬土台土木黄土客土出土泥土粘土表土糞土ふんど
人の住みつくところ。領有する地域。土地。「異土王土郷土国土焦土浄土寸土全土風土本土冥土めいど沃土よくど楽土領土
地方。その土地の。「土豪土産どさん土俗土着
五行の第三位。「土用
土佐とさ国。「土州
〈ト〉
土。地域。「土地率土
トルコ。「露土戦争
〈つち〉「土色赤土壁土黒土
[名のり]ただ・のり・はに・ひじ
[難読]産土うぶすな生土うぶすな土器かわらけ三和土たたき土筆つくし土耳古トルコ土師はじ・はにし土産みやげ土竜もぐら唐土もろこし

ど【土】

つち。土壌。「に帰す」
土地。地方。国。
「医師は…至急に―を換うるが第一ならんと」〈逍遥・内地雑居未来之夢〉
土曜日
五行ごぎょうの第三位。方位では中央、季節では土用五星では土星、十干ではつちのえつちのとに配する。

つち【土】[書名]

長塚節ながつかたかしの小説。明治43年(1910)発表。作者の郷里鬼怒川のほとりの農村を舞台に、貧農一家の生活を写生文体で精細に描く。昭和14年(1939)、内田吐夢監督により映画化。出演、小杉勇風見章子ほか。第16回キネマ旬報ベストテンの日本映画ベストワン作品。

に【土】

土。特に赤土。
櫟井いちひゐ丸邇坂わにさの―をはつ―は膚赤らけみ」〈・中・歌謡〉

と【土/度】[漢字項目]

〈土〉⇒
〈度〉⇒

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「土」の解説


つちとい

[現在地名]仙台市土樋・土樋一丁目

広瀬川左岸沿いの東西に長い通りで、北西部は片平かたひら丁の南端部、西端部はこめふくろ、東端部は石名坂いしなざか堰場どうばに接する。割付の時期は寛永四―五年(一六二七―二八)若林わかばやし城普請に伴う城下南東方への拡張期である寛永年間と思われる。正保仙台城絵図では西半部に侍屋敷と鷹師屋敷が割付けられ、東は餌指屋敷がみえる。元禄城下絵図にも侍・餌指衆の屋敷がみえるが、侍屋敷も大半が狭い屋敷割であることから、組士に属する鷹匠の屋敷と考えられる。餌指は足軽に属した。「仙台鹿の子」に、むかし土の樋をかけて水を流したことがあるので名があるとみえ、土の樋を利用して流した水は孫兵衛まごべえ堀に注いだものと思われる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「土」の意味・わかりやすい解説

土 (つち)

長塚節長編小説。1910年(明治43)に《朝日新聞》に連載。夏目漱石の序を付して,12年春陽堂刊。作者の郷里である鬼怒川沿いの関東平野の寒村を舞台に,そこに生きる貧農勘次一家の人間関係と生活を丹念に描く。妻のお品は自分で妊娠中絶しようとして命を落とす。娘のおつぎは卑屈な入り婿の父勘次と元自作農だった誇りを持つ祖父卯平の間に立ってかいがいしく働く。この3人を中心に幼い弟妹や地主一家との交渉を描き,いくら働いても貧しさから脱出できない小作農の悲惨な生活の実態が示されている。また村の年中行事,四季の移りかわり,自然の風物の精細な描写も特色の一つである。いわば当時の農村の厳しい現実を客観的に再現してみせた農民文学の傑作である。
執筆者:

1939年,内田吐夢監督により日活で映画化された。貧しい小作農勘次が,妻をなくしたあと,娘おつぎとともに労働に明け暮れつつも生活苦にあえぐ姿を,祖父卯平との不仲,地主との関係のなかで描いていく。シナリオは八木隆一郎北村勉。配役は勘次が当時内田吐夢作品の常連であった小杉勇,おつぎが新人の風見章子,卯平が日活の名優山本嘉一。茨城県の農村に撮影用の農家を建て,そこにスタッフが住み込み,約1年間かけて撮影されただけあって,碧川(みどりかわ)道夫のカメラによる画面は,農村の四季をなまなましく克明にうつし出し,リアリズム映画の一頂点と目されるに至っている。内田吐夢は当時,稲あるいは米に関する記録映画を撮りたいと考えていたといわれ,そのことがこの作品に大きく反映して,自然主義リアリズムを超えるドキュメンタリズムの迫力を結実させている。例えば卯平の過失から勘次の家が全焼するシーンでは,実際の農家1軒を丸ごと燃やして,つぶさに撮影するほどに,内田吐夢の記録精神は貫徹された。すでに日本は戦時下にあり,一種の重農政策がとられはじめていた時代の作品ゆえ,国策映画に類するとの評価もあったが,そうした域を超える力があると認められ,日本映画史上の名作の一つに数えられている。
執筆者:

土 (つち)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「土」の意味・わかりやすい解説

土【つち】

長塚節(たかし)の長編小説。1910年,夏目漱石の推薦で朝日新聞に連載。作歌と写生文で鍛えたリアリズムの手法により,鬼怒川べりの農村を舞台に貧農一家の生活を克明精緻(せいち)に描いたもので,農民文学の代表的作品とされている。

土【つち】

土壌

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「土」の解説


つち

長塚節(たかし)の長編小説。夏目漱石の依頼で1910年(明治43)6月13日から11月17日まで「東京朝日新聞」に連載。12年5月春陽堂刊。鬼怒川沿いの自然と習俗を背景に,貧しい小作人勘次の屈折を強いられた生き方が,妻の死,舅との確執,亡妻そっくりの娘おつぎへの異常な愛情や,家の火事などを通して克明に描かれる。写生文を基調とした透徹したリアリズムによる近代農民文学の傑作。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土」の意味・わかりやすい解説


つち

長塚節 (たかし) の長編小説。 1910年発表。夏目漱石の依頼に応じて『朝日新聞』に連載した作者の唯一の長編で,郷里である鬼怒川に沿った僻村を舞台に,農民生活の実態を徹底して描写した作品。農村の四季の風物,年中行事などを背景に,小作農の貧しさ,利己心などを独自の写生文で克明にあるがままに描いて,農民文学の代表作となった。


つち

日本映画。 1939年日活作品。監督内田吐夢。脚本八木隆一郎,北村勉。原作長塚節。出演小杉勇,風見章子,山本嘉一。土に生きる貧しい農民の生態を,3年の制作日数を費やして重厚かつ克明に描いた文芸映画で,この年のベスト・ワンに選出された。


つち

土壌」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「土」の解説

1939年公開の日本映画。監督:内田吐夢、原作:長塚節、脚色:八木隆一郎、北村勉、撮影:碧川道夫。出演:小杉勇、風見章子、山本嘉一、月見凡太郎ほか。第16回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベスト・ワン作品。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

占い用語集 「土」の解説

五行の一つ。土を象徴し、陽の土「戊土」と陰の土「己土」がある。大地そのものの意味だけではなく、生成や腐敗など土に関する作用全般を指す。季節では土用、方角では中央をあらわす。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【四大】より

…また密教では認識作用の〈識大(しきだい)〉を加えて〈六大〉とし,一切万有・全宇宙の構成要素とする。【井ノ口 泰淳】
[西洋]
 西洋では四大とは,〈四大元素four elements〉すなわち土,水,火,空気を指す。アリストテレスの哲学では,四大は乾,湿,熱,冷という四つの基本性質と配合され,土は乾と冷,水は湿と冷,火は乾と熱,空気は湿の熱の組合せに対応する。…

【土壌】より

…土壌は一般に土ともいわれ,岩石の風化産物である微細な破砕物質と植物遺体に生物作用が働いて生じたものである。岩石の風化産物そのものは微細物質の凝集体であって,水分や空気は固体の中に閉じこめられ,その構造の中には植物の根が容易に侵入できない。…

※「土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android