土・地(読み)つち

精選版 日本国語大辞典 「土・地」の意味・読み・例文・類語

つち【土・地】

[1] 〘名〙
① 地球の外殻、特に陸地。また、その表面。大地。地上。地面。⇔天(あめ)
書紀(720)推古八年二月(図書寮本訓)「天上(あめ)に神有します。地(ツチ)に天皇有します」
※竹取(9C末‐10C初)「大空より人、雲に乗りて下り来て、つちより五尺ばかり上りたる程に、立ち列ねたり」
② ①を形成している岩石などが細かい粉末状となったもの。岩石・鉱物と区別していう。
古事記(712)上「無き八尋殿を作り、其の殿の内に入りて、土(つち)を以て塗り塞ぎて」
※談義本・風流志道軒伝(1763)二「吹き来る風もいと寒く道の辺はいてかへりて、土とも石ともわきがたきに」
③ (①から転じて) 道路。
※枕(10C終)三九「つちありくわらはべなどの、ほどほどにつけて、いみじきわざしたりと思ひて」
④ (①から転じて) 地上の世界。現実の世界。現世。俗界。
※堤中納言(11C中‐13C頃)よしなしごと「てんぢくの山、にはとりのみねのいはやにまれ、こもり侍らむ。それもなほつち近し」
⑤ 地上の、ある特定の場所。限られた地域。地(ち)
※談義本・風流志道軒伝(1763)一「汝が修行成就して、再び此土へ帰りし時」
⑥ 階段。きざはし
※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「(階(ツチ))を上りて来りて堂の内に入りて」
⑦ 価値のないもの、容貌の醜いことのたとえ。
源氏(1001‐14頃)蜻蛉「ここちよき人を見集むれど、似るべくもあらざりけりと覚ゆ。御前なる人はまことにつちなどの心ちぞするを」
⑧ あかぬけていないこと。また、そのもの。いなか。いなか者。
洒落本・風流裸人形(1779か)下「いなかのきゃくていな。〈略〉つちのくせにせりふつけて、いけたしろものじゃない」
⑨ (「じげ(地下)」の「地」の訓読みか) 清涼殿殿上の間に昇殿する資格を認められていないもの。地下(じげ)
落窪(10C後)一「六位といへど、蔵人とにだにあらず、つちの帯刀の、歳二十ばかり、長は一寸ばかりなり」
⑩ 摂津国有馬郡名塩村(兵庫県西宮市塩瀬町名塩)で産した鳥の子紙の一種。泥土を混ぜるため厚くて重く、裂けやすかったが耐熱性、防虫性にすぐれた。名塩紙。〔文芸類纂(1878)〕
⑪ (「犯土・槌・椎」とも書く。「つぢ」とも) 陰陽道や近世の俗信で、地神土中にいると考え、穴掘・築土・動土など土を犯すことを忌むこと。また、その期間。干支一巡の間、庚午から甲申に至る一五日間をいい、そのうち、庚午から丙子に至る七日間を大土(おおつち)戊寅から甲申に至る七日間を小土(こつち)、中間の丁丑日を間日(禁忌から解放される日)とする。一説に庚午から丁亥に至る一八日間ともいう。また、この期間中、出産を忌むとされ、特にこの期間に汲んだ水を産湯に使うことは禁物とする風習があった。→大土小土
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第三一「槌に生れて咒詛(まじない)の風 一に俵大黒殿の御悦び」
⑫ 「つちぎみ(土公)」の略。
[2] (土) 小説。長塚節作。明治四三年(一九一〇)発表。鬼怒川近郊の貧農勘次一家の、救いのない生活の中にも懸命に土に生きる姿を、精細な写生文体で描く。農民文学の代表作。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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