国際放射線防護委員会(読み)コクサイホウシャセンボウゴイインカイ

デジタル大辞泉 「国際放射線防護委員会」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐ほうしゃせんぼうごいいんかい〔‐ハウシヤセンバウゴヰヰンクワイ〕【国際放射線防護委員会】

アイ‐シー‐アール‐ピー(ICRP)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「国際放射線防護委員会」の意味・わかりやすい解説

国際放射線防護委員会【こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい】

1928年国際放射線学会議(ICR)で創設放射線防護,放射線安全の方策の基本原則を検討し,その結果を勧告,報告として公表している国際機関。International Commission on Radiological Protection,略称 ICRP。おもな活動としては,原子力,放射線の広範囲にわたる利用から人間およびその環境の安全を確保するための基本原則である線量制限体系(正当化,最適化,線量制限)の整備と,その数値的基準(作業者および一般公衆に対する線量当量限度)の作成がある。ICRPによって勧告された基本原則は日本をはじめ多くの国々の原子力発電など放射線利用施設で放射線防護基準やその方策,法令等を作成する際に参考にされる。ICRP は,主委員会と四つの専門委員会――(1)放射線影響,(2)体内被曝,(3)医療における放射線防護,(4)主委員会勧告の適用――および課題グループから成り立つ。委員は,国籍によってではなく,放射線医学,放射線防護,物理学保健物理学,生物学,遺伝学生物化学生物物理学などの専門分野からすぐれた業績をもつ研究者が選出されている。2011年3月に起こった,原発史上最悪の事故の一つとされる福島第一原発事故による,広範囲の放射線汚染と放射性物質拡散でICRPの存在が国際的に注目された。同委員会は,原発事故などの緊急時に一般人が一年間にあびる放射線積算量20〜100ミリシーベルトの場合は対策が必要とし,福島第一原発事故を受けて,日本に基準を改めるよう勧告した。事務局はスウェーデンのストックホルム
→関連項目線量限度放射線防護

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際放射線防護委員会」の意味・わかりやすい解説

国際放射線防護委員会
こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい
International Commission on Radiological Protection

略称ICRP。放射線防護の基本原則を適宜勧告するための国際的組織。1928年第2回国際放射線医学会議において国際X線およびラジウム防護委員会(IXRPC)として設立され、1950年に現在の名称と組織形態に改められた。この委員会から発表される線量限度などについての諸勧告は、日本をはじめ各国で放射線防護の関係法令に採用されてきた。

 委員会は、主委員会といくつかの専門委員会からなり、世界の国々から選出された放射線関連の専門家たちによって構成されている。メンバーの分野は放射線医学、放射線防護学、物理学、生物学など広い領域にわたっている。創設以来、委員会は放射線防護に関する勧告書や報告書を刊行しており、1958年の勧告書からは連続したPublication 番号が付与されている。1977年の主勧告はPublication 26、1990年勧告はPublication 60となっており、2007年勧告は Publication 103として刊行されている。

[井澤庄治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「国際放射線防護委員会」の意味・わかりやすい解説

国際放射線防護委員会 (こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい)
International Commission on Radiological Protection

略称ICRP。1928年国際放射線学会議(ICR)で創設されて以来活動を続け,放射線防護,放射線安全の方策の基本原則を検討し,その結果を勧告,報告として公表している。そのおもなものとしては,原子力,放射線の広範囲にわたる利用から,人間およびその環境の安全を確保するための基本原則である線量制限体系(正当化,最適化,線量制限)と,その数値的基準(作業者および一般公衆に対する線量当量限度)がある。ICRPによって勧告された基本原則は,日本をはじめ多くの国々,あるいは原子力・放射線利用施設などで,放射線防護基準や方策を作成する際に参考にされている。ICRPは,主委員会と四つの専門委員会--(1)放射線影響,(2)体内被曝,(3)医療における放射線防護,(4)主委員会勧告の適用--および課題グループから成り立っている。委員は,国籍によってではなく,放射線医学,放射線防護,物理学,保健物理学,生物学,遺伝学,生物化学,生物物理学の各専門分野から,適切な均衡を考慮して選出されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

知恵蔵 「国際放射線防護委員会」の解説

国際放射線防護委員会

専門家の立場から放射線防護に関する勧告をする国際的な学術組織。1928年に開かれた国際放射線医学会総会で前身となる国際X線・ラジウム防護委員会が発足した。50年に国際放射線防護委員会(ICRP)に改称された。主委員会と5つの専門委員会(放射線影響、誘導限度、医学領域における放射線防護、委員会勧告の適用、人間以外の生物種に対する放射線防護)で構成し、科学データに基づいて放射線防護の考え方や指標となる数値を検討する。その結果は、ICRP勧告という形で各国の専門家、規制当局に向けて公表される。数値的基準については、放射線防護に用いる基本的な線量は吸収線量(Gy=グレイ)であり、ほかに線量当量(Sv=シーベルト)、実効線量(Sv)も必要に応じて用いることとした。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際放射線防護委員会」の意味・わかりやすい解説

国際放射線防護委員会
こくさいほうしゃせんぼうごいいんかい
International Commission of Radiological Protection; ICRP

放射線防護の国際的な基準を勧告することを目的とした委員会。 1928年にストックホルムで開かれた国際放射線医学会の第2回会議で,X線およびラジウム防護委員会として組織された。その後,放射線利用の増大と放射線の種類の拡大に対応して国際放射線防護委員会に改組され,放射線安全基準の新しい勧告を発表し,その後この勧告は数回にわたって改訂された。国際放射線医学会のなかの一専門委員会であるが,その勧告は国際的に重要視され,また,世界保健機関 WHOの諮問機関としても活動している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android