国連制裁決議(読み)こくれんせいさいけつぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国連制裁決議」の意味・わかりやすい解説

国連制裁決議
こくれんせいさいけつぎ

国際連合が国連憲章第7章39条に基づき、国際平和への脅威を及ぼし、平和の破壊や侵略行為をする加盟国への制裁を決めること。国連安全保障理事会において、常任・非常任理事国15か国のうち計9か国以上の賛成で採択される。ただし常任理事国のうち1か国でも反対拒否権行使)すれば、決議は採択されない。制裁決議は国連憲章25条に基づいて国連全加盟国への法的拘束力をもち、加盟国は決定に従わなければならない。国際平和と安全への脅威に対する安保理の対応措置には、(1)制裁決議、(2)非難決議、(3)議長声明、(4)報道機関向け声明、などがある。そのうち議長声明(公式文書として記録)や報道声明(公式文書にはならない)には法的拘束力がなく、法的拘束力をもつ非難決議と制裁決議の効力が大きい。ただ決議には、通常、常任理事国間での調整に時間がかかるうえ、拒否権が行使されるケースもあることから、事態の緊急性などに応じて迅速に対応できる報道声明や議長声明が選択されることが多い。

 国際平和と安定への脅威となる当事国に対し、安保理はまず平和の維持・回復に向けた勧告を行い、その上で改善がみられない場合、制裁決議を採択する。制裁には、経済制裁や外交関係断絶などの非軍事制裁措置(41条)と、41条措置では不十分な場合の軍事的制裁措置(42条)がある。非軍事的制裁措置には、鉄道、航空、郵便、電信、無線通信などの運輸手段の中断による武器禁輸、空域封鎖、主要産品の輸出入禁止・制限、資金凍結などのほか、外交官の行動制限や外交関係の断絶などがある。核実験を繰り返す北朝鮮に対し2016年まで計5回の制裁決議がなされているほか、クウェートへ侵攻したイラク制裁決議(1990)、パンナム航空機爆破に関与したとされるリビア制裁決議(1992)、核兵器開発疑惑のあったイラン制裁決議(2006)などがこれまで採択されている。

[矢野 武 2017年6月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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