国津罪(読み)くにつつみ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国津罪」の意味・わかりやすい解説

国津罪
くにつつみ

古代における罪の一種。大祓詞 (おおはらいのことば) (『延喜式』所載) には,その例として,生膚断 (いきはだだち) ,死膚断 (しにはだだち) ,白人 (しろひと) ,胡久美 (こくみ) ,己が母犯せる罪,己が子犯せる罪,母と子と犯せる罪,畜 (けもの) 犯せる罪,昆虫 (はうむし) の災 (わざわい) ,高津神 (たかつかみ) の災,高津鳥の災,畜仆 (けものたおし) ,蠱物 (まじもの) せる罪の 13種,『大神宮儀式帳』には,これ以外に川入 (かわいり) ,火焼 (ひやき) の2つがみえている。平安時代の学者は,これを神代において,国土人民の犯した罪に源泉をもつと解している。国津罪のなかには,神の怒りに触れるような「けがれ」た状態も含まれている。ゆえに,この罪は,天津罪よりは,さらに原始的であって,はるかにその成立が先行するものと考えられている。国津罪が犯されたとき,個人祓を科しうるか否かについては論争がある。しかし,推古紀にみえる白人に対する処遇から推して,これを肯定的に解しうる。国津罪の個人祓は原則として島へ流すという,一種の社会外追放である。おそらく白人は祓物提供によっても回復しがたく,ほかに「けがれ」をもたらす可能性があり,それ自体を除去する必要があったと思われる。

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百科事典マイペディア 「国津罪」の意味・わかりやすい解説

国津罪【くにつつみ】

日本古代における罪の分類天津罪(あまつつみ)の対。《延喜式(えんぎしき)》の〈大祓詞(おおはらえのことば)〉では近親相姦(そうかん),生物に対する傷害など14種をあげている。この中には病気自然災害も含むが,これは神が穢(けが)れとして忌みきらうものは罪であるという思想に基づく。

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改訂新版 世界大百科事典 「国津罪」の意味・わかりやすい解説

国津罪 (くにつつみ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国津罪」の意味・わかりやすい解説

国津罪
くにつつみ

天津罪・国津罪

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世界大百科事典(旧版)内の国津罪の言及

【天津罪・国津罪】より

…《古事記》や《日本書紀》の神代の巻にはアマテラス(天照)大神の農耕や祭祀を妨害したスサノオ(素戔嗚)神のさまざまな罪があげられ,《古事記》の仲哀天皇の段にもそのような罪による穢(けがれ)を除去するために〈国の大祓(おおはらえ)〉をしたことがみえる。それらは後の〈大祓詞〉という祝詞(のりと)で天津罪と国津罪とに分けられ,前者としては(1)畔放(あはなち),(2)溝埋(みぞうみ),(3)樋放(ひはなち),(4)頻蒔(しきまき),(5)串刺(くしざし),(6)生剝(いけはぎ),(7)逆剝(さかはぎ),(8)屎戸(くそへ)(脱糞の意)の8種,後者としては(1)生膚断(いきはだだち),(2)死膚断(しにはだだち),(3)白人(しろひと),(4)胡久美(こくみ)(瘤(こぶ)や疣(いぼ)など),(5)己が母犯せる罪,(6)己が子犯せる罪,(7)母と子と犯せる罪,(8)子と母と犯せる罪,(9)畜(けもの)犯せる罪,(10)昆虫(はうむし)の災,(11)高津神の災,(12)高津鳥の災,(13)畜仆(たお)し,(14)蠱物(まじもの)する罪の14種が列挙されるに至った。これらのうちで,天津罪の(1)~(5)は農耕妨害,(6)~(8)は祭祀の場をけがす行為,国津罪の(1)(2)は身体損壊,(3)(4)は皮膚疾患,(5)~(8)は近親相姦,(9)は獣姦,(10)~(12)は農業災害,(13)(14)は呪詛をそれぞれ指すとみられているが,なかには例えば近親相姦の4種のように同じ罪の呼びかえにすぎないと思われる場合もあって,分類や列挙の規準は明確でない。…

【罪】より

… 日本には古来,人間による悪行とともに穢(けが)れや禍(わざわい)などをも含めた神道的な罪の観念があった。すなわち農耕を妨害して神祭りを冒瀆する天津罪(あまつつみ)や社会秩序を破壊する国津罪(くにつつみ)は前者の悪行に属するが(天津罪・国津罪),同時に死や病気,けがや出産の穢れ,天変地異など人間生活を脅かすものも罪であるとし,それらを除去して正常な状態にひきもどすためいろいろな祓(はらい)や禊(みそぎ)が必要であるとされた。日本の場合,罪は祓や禊によって容易に除去されるという意識が強く働き,先の浄土教的な罪業意識は深くは浸透しなかったといえよう。…

※「国津罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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