国民文学(読み)こくみんぶんがく

精選版 日本国語大辞典 「国民文学」の意味・読み・例文・類語

こくみん‐ぶんがく【国民文学】

〘名〙
一国国民性または国民文化のあらわれた、その国民に特有な文学。また、その国で広く愛読され、評価されているその国を代表する文学。
※「大菩薩峠」(1957)〈桑原武夫〉「目下ひまがないので、この国民文学を研究するひまがない」
② 近代国家成立に伴ってつくられ、その国家意識を反映して多数民衆に浸透する規模の文学。特に、独立途上の国などでは国の解放、独立への声の反映されたもの。日本では、昭和二七~二八年(一九五二‐五三)に講和条約調印後の民族独立的危機を反映して、盛んに国民文学論が唱えられた。
※我邦現今の文芸界に於ける批評家の本務(1897)〈高山樗牛〉「国民的立脚地に拠りて、衆愚の紛々たるを打破し〈略〉国民文学の旗幟(きし)を明かにする」

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デジタル大辞泉 「国民文学」の意味・読み・例文・類語

こくみんぶんがく【国民文学】[書名]

日本の短歌雑誌。大正3年(1914)、窪田空穂の責任編集で創刊。総合文芸誌としてスタートしたが、7号以降は窪田が主宰する十月会を中心とする会員誌になり、短歌雑誌となった。同人に、松村英一半田良平植松寿樹など。

こくみん‐ぶんがく【国民文学】

一国の国民の諸特性をよく表現した、その国特有の文学。また、その国で広く国民に愛読されている文学。
[補説]書名別項。→国民文学

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民文学」の意味・わかりやすい解説

国民文学
こくみんぶんがく

短歌雑誌。1914年(大正3)6月、窪田空穂(くぼたうつぼ)が空穂中心の結社十月会を母胎として創刊。初めは文芸総合誌として出発し、執筆者は広く文壇、詩壇に及んだが、数号で短歌雑誌の性格を強くした。16年から松村英一が編集の中心になり、46年(昭和21)以後英一主宰。初期同人に半田良平、対馬(つしま)完治、植松寿樹(ひさき)、川崎杜外(とがい)らがあり、さらに菊池庫郎(ころう)、谷鼎(かなえ)、大塚泰治、井上健太郎、生方(うぶかた)たつゑ、山本友一、遠山繁夫、土屋正夫、千代(ちよ)国一らがいる。大正期以後の有力な歌誌の一つで、歌風はてらいのない写実を基本として、創刊当時から一貫している。2000年現在、編集発行人千代。

[武川忠一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国民文学」の意味・わかりやすい解説

国民文学
こくみんぶんがく

世界文学との関連において考えられる場合が多いが,種々の意味に理解される。一国の国民性または国民文化の表われた独特の文学とも,近代国民国家成立に伴ってつくられた文学ともいえる。いずれにしても国民または民族の固有の性格を高度に表現した文学のこと。しかしそれは国粋主義的な排他的民族性の表現をいうのではない。民族性のすぐれた表現は,普遍性をもち,そのまま世界文学としても通用する。また貴族など限られた特殊の階層の要求のみでなく,国民各層の広範な欲求にこたえ,愛読されるという階級的普遍性も,国民文学の重要な条件であるといえよう。

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