国東半島(読み)クニサキハントウ

デジタル大辞泉 「国東半島」の意味・読み・例文・類語

くにさき‐はんとう〔‐ハンタウ〕【国東半島】

大分県北東部の、瀬戸内海に突き出た火山半島。中央にある両子ふたごは標高720メートル。石仏や古寺が多い。

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精選版 日本国語大辞典 「国東半島」の意味・読み・例文・類語

くにさき‐はんとう ‥ハンタウ【国東半島】

大分県北東部、両子(ふたご)山から成る火山半島。摩崖仏国東塔などの仏教遺跡が多い。主産業は農業漁業。かつては七島藺(しちとうい)栽培が盛んで豊後表を特産した。

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改訂新版 世界大百科事典 「国東半島」の意味・わかりやすい解説

国東半島 (くにさきはんとう)

大分県の北東部にある直径30~35kmのほぼ円形の半島。半島の中央部に両子(ふたご)山(720m),文珠山(616m)などの鐘状火山が群立し,これら火山群の周囲には緩やかな同心円状の等高線をもった小起伏の山地が広がっている。これは中央火山群より古い地質年代に噴出した豊肥火山活動の系統に属するもので,浸食がかなり進み,放射状谷が形成され,谷底にははんらん原がよく発達している。海岸線の北半分はリアス海岸となっており,国東市の沖合約5kmの海上に姫島がある。南半分は隆起海岸をなし,海成段丘と白砂青松の砂浜がみられる。気候は瀬戸内式気候帯に属し,降水量が比較的少ないため,多くの溜池で灌漑がなされているが,施設の規模が小さく古いため,日照りが続くと干ばつに見舞われる。

 国東半島は,古くは宇佐神宮とその神宮寺である弥勒寺の荘園となっていたところで,国東六郷の山々に多くの寺が建てられ,ここに独特の国東仏教文化が開花した。石仏,国東塔などの石造美術も多く,豊後高田市大字平野にある熊野磨崖仏は,豊後磨崖仏のなかでも最大のものである。近年,この地域には多くの観光客が訪れるようになった。

 農業は米のほか,かつてはシチトウイの栽培が盛んであった。シチトウイは1661年(寛文1)に日出(ひじ)藩領に導入されて以来,国東半島一円に広がったもので,明治以降も盛んであったが,近年岡山県などのマルイの需要に押されて著しく減少した。これと期を一にして上昇したのがかんきつ類の栽培で,1971年には,それまで県下一の生産地であった津久見市に代わって杵築市が首位となった。1981年には,国東半島全体でのかんきつ類の栽培面積は4422haに達し,県下の栽培面積の5割以上を占めるまでに上昇した。1971年,安岐町と武蔵町(ともに現,国東市)の境に完成した大分空港を基地としてIC産業の進出がみられる。
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豊後国風土記》などによれば古来瀬戸内交通の目標とされ,〈垂仁紀〉には意富伽羅(おほから)国の美女が国前(くにさき)の比売許曾(ひめこそ)神になる話がある。令制により豊後国国埼郡として6郷に区分され,奈良時代にはその3郷に宇佐宮の封戸位田がおかれ,残りのうち国前郷以外は〈浦部十五荘〉として宇佐宮弥勒寺領になる。宇佐宮が道鏡事件で粛清された後,弥勒寺僧が国東半島で山岳修行を始め,各地に霊場が開かれた。718年(養老2)人(仁)聞菩薩が半島に65ヵ寺を開いたとの伝説があるが,平安時代に荘園制が進むにつれて半島全体に伽藍が建立されたと考えられる。1168年(仁安3)の目録では本山,中山,末山の三山組織とあるが,元来は惣山として弥勒寺が管していたのが,比叡山に本家職を寄せ,三山組織ができたものであろう。中央の一山一寺型寺院とは異なり,何某石屋と山号寺号をもつ独立寺院の集合体,これが六郷山(六郷満山)である。磨崖仏,仏像,神像,石造塔婆など無数にあるが,いずれも独自のものをもつ。胎蔵寺山上の大日如来像(頭上に3個の曼荼羅をもつ),不動明王像の磨崖仏,伝乗寺(真木大堂)の弥陀,不動,大威徳明王など9体の仏像,富貴寺大堂(国宝)と内陣後壁の浄土変相図,長安寺の太郎天童像,銅板法華経などは平安時代の代表的文化財で,鎌倉時代には国東独自の宝塔である国東塔を始め多くの石造塔婆,江戸時代には庚申塔など民衆による庶民信仰の遺物が全半島に密集する。国東の文化は中国,朝鮮の諸宗教と日本文化を融合させた宇佐八幡が作り出した遺産というべきであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国東半島」の意味・わかりやすい解説

国東半島
くにさきはんとう

大分県の北東部にある半径30キロメートル余のほぼ円形の火山半島。開析が進み、最高地点の両子山(ふたご)も721メートルにすぎず、みごとに発達した放射谷底の氾濫原(はんらんげん)は10万半島住民の主要生活舞台となり、米、七島藺(しちとうい)、タバコ作が行われている。放射山稜(さんりょう)斜面や段丘面などでは近年ミカン園の開発が進んでいる。シイタケの産も多い。半島南東海岸に1971年(昭和46)新大分空港が開設され、これを中心とする「県北国東」地域が1984年テクノポリス地域に指定された。北部の花びら形入り江をなす沈降海岸や、南東部の段丘、浜堤などの隆起海岸沿いに、国道213号が放射山稜を多くのトンネルで抜けて走り、門戸に豊後高田(ぶんごたかだ)、杵築(きつき)の両城下町が発達した。中央部が高い円形半島は、1889年(明治22)に東国東、西国東両郡に分かたれ、今日、東半は国東市、西半の北部が豊後高田市、同南部が杵築市の3市を構成している。

 古代の半島は豊後国国埼(くにさき)郡に属し、来縄(くなわ)、田染(たしぶ)、伊美(いみ)、国前(くにさき)、武蔵(むさし)、安岐(あき)の6郷に分かれていた。宇佐八幡(はちまん)の発展に伴って、半島の大部分は宇佐八幡とその神宮寺の弥勒寺(みろくじ)の所領となり、半島各地に末社、末寺が多数建立された。これらの大寺院集団を六郷満山(ろくごうまんざん)と称している。平安後期の富貴寺大堂(ふきじおおどう)(国宝。内陣には文化財に指定された壁画がある)、真木大堂(まきおおどう)の仏像9躯(く)、奈多八幡宮(なたはちまんぐう)の三神像をはじめとして、鎌倉時代や桃山時代の優雅な石造宝塔の国東塔や板碑(いたび)の残存も多い。岩戸寺(いわとうじ/いわとじ)ほかの修正鬼会(しゅしょうおにえ)や、諸田山(もろたやま)神社の御田植(おたうえ)祭、国東市武蔵町の吉弘楽(よしひろがく)などの民俗行事も多い。半島がこのように国宝、重要文化財の宝庫であるのは、頸部(けいぶ)の地塁と考えられている山地が、鋸山(のこぎりやま)(543メートル)の名をもつ一峰もあるとおり、かなり険しく、交通遮断性は大で、半島を陸の孤島たらしめてきたのが大きな一因であろう。

[兼子俊一]

『和歌森太郎編『くにさき』(1960・吉川弘文館)』『大嶽順公著『国東文化と石仏』(1970・木耳社)』『酒井富蔵著『国東半島の六郷満山』(1976・第一法規出版)』『梅原治夫著『国東半島の歴史と民俗』(1974・佐伯印刷)』


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百科事典マイペディア 「国東半島」の意味・わかりやすい解説

国東半島【くにさきはんとう】

大分県北東部,瀬戸内海に突出するほぼ円形の半島。中央部の両子(ふたご)山(最高点720m)が形成した火山半島で,放射状の開析谷が発達。西部では葉タバコ,東部では杵築(きつき)藩以来の伝統をもつ七島イ栽培が盛んで,近年は斜面や段丘でのミカンの栽培も活発。東海岸に1971年,大分空港が建設された。沿岸に杵築,安岐,国東,国見,香々地,豊後(ぶんご)高田などの集落が発達,国道213号が通じる。両子山一帯は瀬戸内海国立公園に属し,半島各地に富貴寺(ふきじ),真木大堂など古寺がある。
→関連項目安岐[町]大分[県]香々地[町]杵築[市]国東[町]国見[町]姫島豊後高田[市]真玉[町]武蔵[町]山香[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国東半島」の意味・わかりやすい解説

国東半島
くにさきはんとう

大分県北東部,両子山 (720m) を中心とする大きな円錐形火山からなる半島。古くから仏教文化が栄え,特に平安時代後期には宇佐神宮の弥勒寺 (神宮寺) として開かれた 100をこす寺院 (六郷満山と総称される) が半島全域を覆った。富貴寺 (大堂は国宝。極彩色の内陣壁画や国の重要文化財の如来坐像がある) ,真木大堂 (伝乗寺。国指定重要文化財の仏像9体がある) をはじめ,数多くの寺院,石仏,国東塔,板碑五輪塔などが各地に残されている。中央部は瀬戸内海国立公園に属し,その周辺から真木大堂にいたる山地一帯,および奈多,黒津崎,住吉浜など有名な海水浴場を含む海岸線の大部分は国東半島県立自然公園に指定されている。国道 213号線が海岸を一周し,半島東部に大分空港があり,大分市,別府市とをエアクッション艇 (ホバークラフト) が結ぶ。農業は米作のほか,ミカン栽培などが行なわれる。観光開発が進められている。

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