国府(令制)(読み)こくふ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国府(令制)」の意味・わかりやすい解説

国府(令制)
こくふ

令制(りょうせい)により、中央の帝都に倣って国ごとに設置された地方行政の府。諸国における政治、軍事、文化上の中心として国司(こくし)が常駐し、国内統治および都(みやこ)との連絡にあたった。国のなかでも比較的都に近く、農業生産基盤のしっかりした広大な耕地を控えた交通の要所に設けられる場合が多い。国の等級地形に応じて、方8町から方5、6町の規模を有したと推定され、そのもっとも中枢部に政庁が位置した。政庁を中心とする方2町ないし方1町規模の官衙(かんが)群=実務的役所を国庁(こくちょう)または国衙(こくが)といい、その周辺の国司居館や正倉(しょうそう)、雑舎、総社(そうじゃ)、学校、一般民家などを含めた、これら全体を国府といった。国分寺国分尼寺などはこの国府の周辺に位置した。

 近年の発掘調査によると、政庁をはじめとする官衙地区の成立は多くが7世紀後半にまでさかのぼり、そのもっとも整備されたのは8世紀後半、政庁の建物は正殿(せいでん)と東西両脇殿(わきでん)がコの字形に配置され、正殿の前後に前殿(ぜんでん)、後殿(こうでん)の配置されることが多く、それらはいずれも掘立て柱から礎石建物へと移行するのが一般的であったという。また、政庁域や国庁域はともに溝や築地塀(ついじべい)によって整然と区画され、その構造は平安期を通じて基本的に変わることがなかったともいう。しかし、税所(さいしょ)、田所(たどころ)以下の所(ところ)や在庁官人制の成立による国衙支配機構の変質に伴って、国府、国衙の構造や景観が具体的にどのように変化していったのかは、なお今後の解明をまたねばならない。

[井上寛司]

『藤岡謙二郎著『国府』(1969・吉川弘文館)』

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