国家管理体制(シンガポールの)(読み)しんがぽーるのこっかかんりたいせい/こっかかんりたいせい

知恵蔵 の解説

国家管理体制(シンガポールの)

シンガポールは経済発展を最優先し、国民の政治参加を大幅に制限する開発独裁(開発体制)といえる。経済発展は高度経済成長による国民所得の大幅上昇と、給与の一部を強制的に積み立てる持ち家政策などの形で国民に実感された。しかし、その国家の特徴は政治参加の制限を支配者の恣意性が大幅に入る東南アジア型独裁ではなく、徹底した依法主義(リーガリズム)にある。リーの支配を脅かした左派系野党等の弾圧は、国内治安法や各種のマスコミ規制法などだけでなく、政府・人民行動党への批判的な発言・記事に対しても名誉毀損による莫大な損害賠償を請求する民事訴訟を首相以下が率先して起こすことで抑圧してきた。最高権力者が形式的であれ野党と同じ裁判の場に臨むこうした依法主義が、欧米の政治家やマスメディアによるシンガポール批判に対する一定のセーフガードとして機能してきた。2001年9月の同時多発テロ後、シンガポール政府はイスラム過激派テロ・ネットワーク摘発で終始ASEANをリードしている。

(片山裕 神戸大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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