国家と革命(読み)こっかとかくめい(英語表記)Gosudarstvo i revolyutsiya

改訂新版 世界大百科事典 「国家と革命」の意味・わかりやすい解説

国家と革命 (こっかとかくめい)
Gosudarstvo i revolyutsiya

レーニンの代表作で,広く読まれたマルクス主義古典。第1次世界大戦中にとりはじめた国家論ノートに基づいて,十月革命前夜の1917年8~9月潜行先で書き上げた。革命後部分的に新聞に発表されたが,単行本で出たのは1918年である。〈国家に関するマルクス主義学説と革命におけるプロレタリアート任務〉という副題をもつ本書は,国家が〈階級対立の非和解性〉から生まれた〈特殊な公的暴力〉であり,階級抑圧の道具であると述べ,その廃絶がプロレタリアートの任務であるとした。めざさるべき過渡的国家はパリコミューン型国家(公務員の選挙制,議会常備軍廃止)であると主張された。ここには,レーニンにとっての革命的・ユートピア的情熱が強く表現されている。他方で彼は,コミューン国家成立の根拠として,資本主義のつくりだした技術文化が管理機能を単純化し,かつ国家独占的集中管理が生まれていることを指摘しているが,ここには現代国家についての誤解があったというべきである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「国家と革命」の意味・わかりやすい解説

国家と革命
こっかとかくめい
Государство и революция/Gosudarstvo i revolyutsiya

レーニン著。マルクス主義国家論の古典的著作。ロシア革命のさなか、1917年8月から9月にかけて執筆された。第7章は未完。マルクス、エンゲルスの国家論を詳細に検討し、発展させたもの。祖国擁護を口実にして自国の戦争遂行を是認するカウツキーやプレハーノフらを批判するために執筆された。レーニンは、国家とは階級対立とともに発生した支配階級の被支配階級抑圧のための機関にほかならないこと、社会主義の実現のためには、ブルジョア階級の国家を暴力的に粉砕し、プロレタリアートの階級的独裁を樹立しなければならないこと、社会主義の国家形態はコミューン型国家であり、そのもとで民主主義はいっそう発展し、官僚制も克服され、民族的対立もなくなること、共産主義への移行とともに、国家はひとりでに死滅するであろうことを主張。この著作の準備ノートとして『国家論ノート』がある。

[杉浦秀一]

『レーニン全集刊行委員会訳『国家と革命』(大月書店・国民文庫)』『宇高基輔訳『国家と革命』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国家と革命」の意味・わかりやすい解説

国家と革命
こっかとかくめい
Gosudarstvo i Revolyutsiya

ロシア革命の指導者レーニンが 1917年8~9月に執筆した著作。マルクス主義国家論とプロレタリアートの任務の解明をその中心的内容としている。第1章は国家の本質的解明を目的とし,国家の「死滅」と暴力革命の問題などを論究している。第2,第3,第4章は 1848~51年の革命,およびパリ・コミューンの経験を経るなかで発展したマルクスとエンゲルスの国家論の総括がなされている。第5章では国家死滅の経済的基礎の解明を中心とし,第6章ではさまざまなマルクス主義国家論の解釈を批判している。第7章は「1905年と 1917年のロシアの経験」としてプランが立っていたが,十月革命が迫り執筆されなかった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の国家と革命の言及

【共産主義】より

レーニンは後に,このマルクスのいう第1段階を社会主義と呼び,第2段階を共産主義と呼んだ。 レーニンは,第1次大戦の勃発とともに第二インターナショナルが思想的に破産したと判断し,マルクス主義の共産主義的部分を復活させることを意図して《国家と革命》(1917)を書いた。そして,コミューン型の国家をモデルにロシアのソビエトを基盤とした革命政権を樹立した(十月革命)。…

【民主主義】より


[二つの民主主義]
 20世紀における民主主義のもう一つの問題は,ロシアのボリシェビキ革命(1917)をきっかけとして,相互におよそ異質な二つの民主主義概念が生まれてきたことである。この革命の指導者レーニンは,革命前夜に書いた《国家と革命》(1917)の中で,とくにドイツ社会民主党を念頭におきながら,普通選挙権要求を〈小ブルジョア的民主主義〉〈日和見主義〉として非難し,ボリシェビキ革命とその後にくるべき国家こそ〈もっとも完全な民主主義〉であると宣言した。レーニンは,この完全な民主主義も,それが国家であるかぎりいずれは〈死滅〉するであろうと予言したが,その後の歴史で実現したのは国家の死滅ではなくて,ソビエト社会主義における共産党一党支配の永続化であった。…

※「国家と革命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android