国勢調査(読み)こくせいちょうさ

精選版 日本国語大辞典 「国勢調査」の意味・読み・例文・類語

こくせい‐ちょうさ ‥テウサ【国勢調査】

〘名〙 国が一定の時期に行なう全国的な人口調査。日本では大正九年(一九二〇)に第一回の調査が行なわれて以来、五年ごとに簡易調査、一〇年ごとに本調査が行なわれている。センサス

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デジタル大辞泉 「国勢調査」の意味・読み・例文・類語

こくせい‐ちょうさ〔‐テウサ〕【国勢調査】

国の人口・世帯の構造や就業状態などを明らかにするため、全世帯を対象に、一定の周期で、全国一斉に行われる、大規模な全数調査。日本では、総務省が5年ごとに実施する。第1回の調査は大正9年(1920)。西暦年の末尾が0の年には大規模調査、5の年には調査項目が少ない簡易調査が行われる。基幹統計調査の一つで、これをもとに国勢統計が作成される。センサス。

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改訂新版 世界大百科事典 「国勢調査」の意味・わかりやすい解説

国勢調査 (こくせいちょうさ)

人口センサスpopulation censusの訳語として使われることもあるが,日本では,統計法(1947年5月施行)に基づき,政府が全国民について行う人口に関する調査を国勢調査と呼ぶ。指定統計第1号。調査は10年ごとに,またその間の5年目に当たる年には簡易な調査が,それぞれ行われることになっている。調査対象は,調査年の10月1日午前0時現在に日本国内に常住する者(外国人,浮浪者等も含み,国外に出ている者等は含まない)である。近年の調査における調査事項は,(1)氏名,(2)男女の別,(3)出生の年月,(4)世帯主との続柄,(5)配偶の関係,(6)国籍,(7)現住居に入居した時期,(8)前住地,(9)在学,卒業等教育の状況,(10)就業状態,(11)所属の事業所の名称および事業の種類,(12)仕事の種類,(13)従業上の地位,(14)従業地または通学地,(15)従業地または通学地までの利用交通手段,(16)世帯の種類,(17)世帯員の数,(18)家計の収入の種類,(19)住居の種類,(20)居住室の数,(21)居住室の広さ,(22)住宅の建て方,の22項目である。簡易調査の場合は,(7)(8)(9)(15)および(18)を除く17項目である。

 国勢調査の調査主体は表のような変遷をたどって,現在は総務庁統計局が調査を企画し,実地調査は都道府県-市町村-指導員-調査員-世帯の系統で行われる。1人の調査員は,ほぼ50世帯を受け持ち,4名連記の世帯票様式の調査票を各世帯に配布し,記入を依頼するとともに,記入された調査票を取集し,その内容を審査するという,調査の第一線の仕事を行う。そのため調査員は,他の調査関係者と同様に,調査で知りえた秘密を保護するよう統計法において義務づけられており,違反すると罰せられることになっている。

 第1回の国勢調査は,1902年公布の〈国勢調査に関する法律〉に基づき20年10月1日に実施され,その後10年ごとに大規模な調査が,中間の5年目には簡易調査が行われている。なお45年の国勢調査は中止されたが,47年に臨時国勢調査が実施され,また1944年,45年,46年には,資源調査法により全国的な規模の人口調査が行われた。第1回調査の調査事項は,氏名,男女の別,出生の年月日など11項目であり,また簡易調査である第2回調査では,氏名,男女の別,出生の年月,配偶の関係,世帯の種類の5項目と,近年の調査に比べ調査事項の数が少ない。第2次大戦前の大規模調査では,近年の調査事項にはない出生地が調査されており,また1940年の調査では,特別に熟練を要する職種養成が容易でない職種など国の指定する技能について調査するなど,戦時色の濃い調査事項が含まれていた。近年の調査では,調査事項はほとんど変わっていないが,80年の調査では,戦後大規模調査で調査されてきた結婚年数と出生児数が,プライバシーの関係で,調査事項から削除された。

 日本の国勢調査に相当する調査は諸外国においては,人口センサスあるいは人口・住宅センサスとして行われているが,調査事項,調査方法あるいは実施頻度など,国によってかなり異なっている。調査事項については,日本に比して調査事項が多い国が多く,たとえばアメリカの1980年センサスでは69項目も調べている。このように調査事項の多い国では,基本的な調査事項は全部の世帯について調査するが,それ以外の調査事項は標本調査の方法を導入している。たとえばアメリカの場合,23項目についてのみ全世帯で調べるが,残りの46項目については全国平均で約1/5の世帯を抽出して調査する方法をとっている。調査の実施頻度が5年ごとの国は,カナダオーストラリア韓国など少数で,多くの国は10年ごとあるいは不定期となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国勢調査」の意味・わかりやすい解説

国勢調査
こくせいちょうさ
Population Census

国内の人口・世帯の実態を明らかにし、各種行政施策などの基礎資料を得ること目的とした調査。国のもっとも基本的な統計調査である。国勢調査により作成される国勢統計は人口統計の一つであり、統計法上の基幹統計に位置づけられている。総務省統計局が5年ごとに実施しており、2020年(令和2)10月1日実施の調査で開始から100年になる。日本国内に普段住んでいるすべての人(外国人を含む)および世帯を対象とする全数調査で、世帯員に関する15項目(「男女の別」「出生の年月」「配偶者の有無」「就業状態」「従業地又は通学地」など)、および世帯に関する4項目(「世帯員の数」「世帯の種類」「住居の種類」「住宅の建て方」)を調査している。

 もともとは「国勢調査ニ関スル法律」(明治35年法律第49号)に基づいて1920年(大正9)に第1回調査が行われ、その後5年ごとに実施されてきた。第二次世界大戦後は、当時の「統計法」(昭和22年法律第18号。現行法の前身)に基づき、第6回調査として1947年(昭和22)に臨時調査(1945年が終戦年次であり調査が中止されたことによる)が行われ、1950年以降は10年ごとに大規模調査、その中間の5年目に調査項目の一部を省略した簡易調査がそれぞれ行われ、調査年次の10月1日現在における日本人口の静態が把握されてきた。人口把握の基準としては、第1回から第6回までの調査では現在地主義(調査時点に滞在している場所を把握する方法)が採用されていたが、1950年に行われた第7回調査以降は常住地(当該住居に3か月以上住んでいるか)を基準として調査することに改められている。調査結果は、『国勢調査報告』として「全国編」「都道府県・市区町村編」「産業編」等に分けられて大部の統計資料として公表されている。

[飯塚信夫 2020年9月17日]

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百科事典マイペディア 「国勢調査」の意味・わかりやすい解説

国勢調査【こくせいちょうさ】

性・年齢・職業など国の人口静態を把握(はあく)するための全数調査で,最も基本的な人口統計である。単にセンサスとも。日本では1920年以来ほぼ5年ごとに実施され,10年ごとに本調査,中間の5年目に簡易調査がなされている。1947年以後は統計法に基づく指定統計として実施。調査事項は毎回大差ないが,事項の定義は多少異なる。
→関連項目死亡率人口人口静態人口統計生命表全数調査マークシート

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国勢調査」の意味・わかりやすい解説

国勢調査
こくせいちょうさ
census

一定の時点で国民全人口やその属性を,国家が観察する実地調査。センサスの邦訳。日本では 1920年が最初で,ほぼ5年ごとに実施され,第2次世界大戦後は統計法に基づき,10年ごとに大規模調査 (1950,60,70,80,90,2000) ,その中間年次が簡易調査となっている。ただし終戦時の 45年に代って実施された 47年センサス以降は,現在人口主義を常住人口主義に変え,雇用についても平常の就業を知る有業者統計から,実際の就業を知る労働力統計に変えた。国勢調査は指定統計第1号でもあり,戦前の人口統計の性格から,戦後は家計全般の大枠を把握するように拡大されてきた。すなわち,人口,労働,住居項目は毎回調査され,55年以後では従業地や世帯人員も共通項目となった。その後,社会状況に応じて調査項目の削除,追加が行われているが,家計関係の標本調査の母集団としても重要なものである。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「国勢調査」の解説

国勢調査
こくせいちょうさ

population census(人口調査)の日本語訳。欧米ではpopulation and housing censusとして行われることが多い。日本では1902年(明治35)公布の「国勢調査ニ関スル法律」にもとづき,05年に第1回の調査が行われる予定だったが日露戦争のため延期,20年(大正9)に実施された。以後10年ごとに大規模調査年を,またその中間の5年目に簡易調査年をおき,周期的に調査が行われている。45年(昭和20)に予定された調査は敗戦のため47年に実施。47年以降は統計法(47年公布,2007年全面改正)を根拠法とする指定統計。なお,1939年の臨時国勢調査は,「物の国勢調査」とよばれる一種の商業センサスで,人口調査ではない。

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旺文社日本史事典 三訂版 「国勢調査」の解説

国勢調査
こくせいちょうさ

近代国家で行政の基礎資料を得るために実施される統計調査
日本では人口調査のみを行い,1920年以後,5年ごとに簡易調査,10年ごとに本調査を行っている。

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栄養・生化学辞典 「国勢調査」の解説

国勢調査

 5年ごとに総務省が行う人口についての基本的な調査.

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世界大百科事典(旧版)内の国勢調査の言及

【アメリカ合衆国】より

… 下院House of Representativesは,各州より人口に比例して2年の任期をもって選出される議員(通称Congressman)により組織され,その定数は435名(1997)となっている。したがって,10年ごとに行われる国勢調査によって各州への議員の割当てに変動が見られる。1960年代以降の傾向として,かつての北東部に対し,南西部諸州の人口が増大し,その選出議員数がしだいに増大しつつあることは注目してよい。…

【就業人口】より

…もう一つは,より長い期間(通常1年)をとって,その期間内におけるふだんの活動状態を把握しようとするもので,平常usual方式あるいは有業方式と呼ばれる。総務庁統計局が行っている日本の調査では,労働力調査(毎月),国勢調査(5年に1度)などは現在方式を採っており,就業構造基本調査(3年に1度)は有業方式となっている。これは労働力調査が労働力人口の変化を明らかにしようとするのに対し,就業構造基本調査はその名のとおり日本の就業構造を把握することを目的としているためである。…

【住宅統計】より

…サンプル数は多く,調査項目は住宅の建て方・構造・建築時期・所有関係・居住室の広さ・日照時間,世帯構成・世帯主年齢・人員・収入・職業,住居移動,借家の家賃,空家,居住水準などである。住宅統計調査が〈住宅〉を対象にしているのに対し,国勢調査(総務庁統計局,5年おき)は〈世帯〉を対象にした全数調査で,住居の種類・室数・畳数,世帯の種類・世帯人員などが調査項目に含まれている。これに対し住宅着工統計調査(建設省,毎年)は新設住宅の床面積・建設費・所有関係・公的資金の利用状況などフローを対象とする。…

【人口調査】より

…とくに開発途上国における人口調査では,総数のみならず年齢報告において不完全,不正確である場合が多い。日本の人口調査は,法律によって国勢調査とよばれているが,近代的人口調査であることには変りはない。人口調査の周期は10年制の国と5年制の国とがある。…

【人口統計】より

…しかし,このような動態事件vital eventsの中で,出生,死亡と移動は,本質的に性質が異なっているため,現実には出生,死亡(それに結婚,離婚が含まれることが多い)を対象とした統計が人口動態統計として扱われている。人口動態現象である人口移動に関する調査は,一般に別個にサンプル調査や国勢調査の中で間接的に行われている。しかし,日本では,住民基本台帳法(1967公布)に基づいて報告される転出入記録が総務庁統計局によって集計され,《住民基本台帳人口移動報告年報》として公表されている(ただし1954年から67年までは住民登録法に基づく)。…

【世帯】より

…しかし調査技術上の困難もあり,統計的には集団としての家族を世帯単位でとらえる場合が一般的である。すなわち,家族を数量的に把握するため,国勢調査の親族世帯から非親族成員を除外した,同居の親族成員のみからなる集団が,家族集団と等置される。それゆえ世帯を分析単位とする家族研究においては,官庁調査による世帯統計を資料とする場合に,別居家族員についての分析が不備にならざるをえない。…

【センサス】より

…センサスとは,本来は古代ローマで行われた人口登録調査のことであるが,後には国勢調査あるいはそれに類する大規模な人口調査のことをいうようになり,さらには一定の社会集団全体を対象とした大規模な全数調査のことも指すようになった。現在では人口センサス(国勢調査)のほかに,事業所センサス,農業センサス,林業センサス,工業センサス,商業センサスなどの言葉が用いられている。…

【高野岩三郎】より

…長崎に生まれ,1895年東京帝大法科卒後ヨーロッパに留学,おもにG.マイヤーの指導を受け,帰国後東大教授となり統計学を担当した。1910年国勢調査準備委員となって日本最初のセンサス実施を指導し,また16年東京において日本で初めての職工家計調査を実施した。さらに,東大の法科大学から経済学部を独立(1919)させることに尽力した。…

【統計】より

…それには,すべての統計を一つの官庁で作成する集中型と,各官庁にそれぞれの担当する部門に関する統計を作成する部局をもつ分散型との二つのタイプがある。日本では,国勢調査および世帯に関する調査を扱う総務庁統計局のほか,中央省庁に統計を担当する部課があり,また金融関係および卸売物価については日本銀行が担当しており,分散型の統計機構となっている。統計の実地調査の大部分はこれらの中央省庁の企画にもとづいて,県および市町村の統計担当課,係が随時雇用される調査員を指揮して行い,その結果は中央省庁に集められて,集計,整表のうえ公表される。…

※「国勢調査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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