国体(読み)こくたい

精選版 日本国語大辞典 「国体」の意味・読み・例文・類語

こく‐たい【国体】

〘名〙
① 国家の状態。くにがら。くにぶり。
※玉葉‐養和元年(1181)一一月五日「伯耆国御厨年来、故女院御領也、被国之条、不当事也、然而国体不便、仍不沙汰」 〔漢書‐成帝紀〕
② 国家の体面。国家の体裁
随筆・折たく柴の記(1716頃)中「かかる事ども、国体にしかるべからず」 〔漢書‐翟方進伝〕
③ 国家を統治権の存在状態によって区分した形態やその特質君主制共和制、立憲君主制など。
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初「史記以て時勢の沿革を顕はし、政治以て国体の得失を明にし」
④ 特に日本では天皇統治の観念中核とした国のあり方をいう。幕末から第二次大戦前にかけて、民族的優秀性を示す概念として用いられた。→国体明徴運動
※風俗画報‐一八〇号(1899)論説「我が国体の世界万国に冠絶せる一事なり」
[補注]「国体」という表記は、日本でも古く「天穂比命を国体見(みせ)に遣はしし時に」 〔延喜式‐祝詞・出雲国造神賀詞〕とみえるが、出雲板訓ではクニカタと読まれている(国状の意)。

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デジタル大辞泉 「国体」の意味・読み・例文・類語

こく‐たい【国体】

国家の状態。くにがら。
国のあり方。国家の根本体制。「国体を護持する」
主権の所在によって区別される国家の形態。君主制共和制など。
国民体育大会」の略。

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知恵蔵 「国体」の解説

国体

国民体育大会」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「国体」の意味・わかりやすい解説

国体【こくたい】

(1)憲法学国家学などでは,国の主権のあり方(君主制共和制)をさし,主権の運用の仕方としての政体専制政治,立憲政治)と区別される。(2)明治憲法下の日本では一般に〈国がら〉という漠然とした内容で,もっぱら万世一系の天皇が統治する尊い国という意で用いられた。→国体明徴問題
→関連項目王政復古(日本)国民精神作興詔書天皇制

国体【こくたい】

国民体育大会

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普及版 字通 「国体」の読み・字形・画数・意味

【国体】こくたい

国の体制。国がら。〔漢書、成帝紀〕儒林の官は四淵原なり。宜しく皆古今にらかに、故知新、國體にすべし。故に之れを士と謂ふ。

字通「国」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国体」の意味・わかりやすい解説

国体
こくたい

一般的には国柄や国風を意味し,この用例は漢籍や古代日本にもみられる。しかし中国や西洋に対して日本の優越を示す根拠として,国生み神話に基づく天皇の神聖性とその君臨の持続性を内容とする意味で用いられるのは,19世紀以降水戸学に始る。維新以後も,一般の論説のほか,教育勅語や新聞紙条例,治安維持法などの法令にも国家体制の正当性を示す言葉として登場するが,意味内容は明確ではない。またその使用には論争性が当初から伴われ,福沢諭吉や加藤弘之ら明治初期の啓蒙思想家からの批判や,明治末期から大正期の穂積八束の憲法解釈に対する美濃部達吉の批判が代表的なものである。昭和期には左翼勢力や美濃部の天皇機関説に代表されるリベラルへの弾圧の根拠としてその神話的解釈が一層強調され,その傾向は国体明徴や文部省の『国体の本義』に頂点をみる。敗戦および新憲法制定を通じて,統治の正当性根拠としての役割は終焉した。

国体
こくたい

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旺文社日本史事典 三訂版 「国体」の解説

国体
こくたい

記紀神話の天孫降臨の神勅に原理を置いた天皇支配の国家のあり方
日本は天照大神 (あまてらすおおみかみ) を祖とする万世一系の皇統が支配するものと定められているという考え。満州事変を契機に台頭した軍部・右翼勢力は,天皇を国家の最高の機関とする美濃部達吉の憲法学説(天皇機関説)を国体否認の反逆思想として攻撃し,岡田啓介内閣は天皇の権力の絶対性を強調し,「国体明徴」の声明を発した。

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改訂新版 世界大百科事典 「国体」の意味・わかりやすい解説

国体 (こくたい)

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世界大百科事典(旧版)内の国体の言及

【国民体育大会】より

…第2次世界大戦後に始まった国民スポーツ振興を目的とする国内総合競技大会。略称は〈国体〉。第1回大会は大日本体育協会(日本体育協会の前身)が敗戦で荒廃した国民生活に活力を与え,日本のスポーツ界を再建するために企画,主催し,夏季,秋季両大会が1946年に京阪神地区で,冬季大会スケート競技会が47年に青森県八戸市で開催された。…

【国体思想】より

…天皇統治の正当性または日本国の優秀性を唱える思想をいう。〈国体〉の語は,政治学・法律学上その概念を使用する場合には主権の帰属いかんによって国家を区別する場合に用いられ,通常,君主国体と共和国体に区別される。しかし日本では特殊に,万世一系の天皇によって統治される優秀な国柄を表す概念として用いられ,(1)永久不滅の天皇主権を指す場合,(2)君臣の特別の情誼関係を指す場合,(3)国風文化全般を指す場合等,きわめて多義的な内容の概念として使用された。…

【国民主権】より


[日本国憲法と国民主権]
 日本国憲法は,前文第1段と第1条で国民主権をとり入れた。その制定時には,明治憲法の天皇主権から日本国憲法の国民主権への転換に伴って,〈国体〉(国家の根本的特色)が変わったかどうか激しく論争された。尾高・宮沢論争は,その代表的なものである。…

【尊王論】より

… 幕末における内外の危機に対応して登場する水戸学は,攘夷を創唱すると同時に尊王と結びつけ,その後の過程で重要な役割を演ずる尊王攘夷の観念を打ち出した。ここでは,儒教の名分論を基礎としつつ国学の理論をもとり入れ,一系の天皇が存続し忠の道徳が妥当してきた日本の国家体制(国体)の優秀性を強調しながら,尊王が以前にないほど強く説かれる。しかし,天皇―将軍―大名―藩士という各級の者が直接の上位者に忠誠をささげることが不動の前提となっているため,尊王はこの階層秩序を維持しようとするものにほかならない。…

※「国体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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