国の債権の管理等に関する法律(読み)くにのさいけんのかんりとうにかんするほうりつ

改訂新版 世界大百科事典 の解説

国の債権の管理等に関する法律 (くにのさいけんのかんりとうにかんするほうりつ)

国の債権の管理の適正を期するために,その管理に必要な機構および管理の準則を整備し,国の債権の内容の変更・減免等に関する一般的基準を設定するとともに,国の債権の発生の原因となる契約に関してその内容とすべき基本的事項を定める法律(1956公布)。本法が制定される前も,国の財産としての債権については,その減免および効力の変更は法律に基づくべきものとされていたが(財政法8条),国有財産法国有社債券等)や国税徴収法租税債権)等に部分的な管理規定が置かれていたにすぎなかった。国の財産は法律に基づく場合を除き,これを交換しその他支払手段として使用しえず,譲渡についても規制が加えられ,かつ,これをつねに良好の状態において管理し,最も効率的に運用することが義務づけられている(財政法9条)にもかかわらず,債権の徴収不足や徴収手続の遅延等をきたして国に損害を与えることがあり,会計検査院の決算検査報告書等でこのような事態が問題点としてしばしば指摘されていた。このような債権管理の状態を是正するために,国の債権の発生から消滅までを,国の財産として統一的にとらえて,財政法の趣旨に沿った債権管理(保全,取立て,内容の変更および消滅)を規律する法律として本法が制定された。この法律の適用を受けるのは金銭の給付を目的とする債権であるが,罰金債権等は特殊な性格を有するものとして明示的に除外されている(2条1項,3条)。まず,各省各庁においては歳入徴収官や支出官等を債権管理機関として国の債権管理に関する事務を行わせるものとし,また,大蔵大臣に債権管理制度の整備や債権管理の事務手続の統一等の総括責任を負わせている(第2章)。次に,債権管理事務は法令に従い債権の発生原因・内容に応じて財政上最も国の利益に適合するよう処理すべきであるとする原則(10条)に基づいて,債権管理の準則を詳細に定めている(債権の発生・帰属についての帳簿への記載,履行の請求,強制履行の請求,保全措置,相殺等。第3章)。次に,債権の内容の変更および免除等について,履行延期の特約,和解,免除等が恣意的に行われないようそれらの要件を詳細に定めている(第4章)。最後に,国の債権の発生原因となる契約等の内容に関し,法律またはこれに基づく命令で定められた場合を除いて,契約等担当職員が債権の減免,履行期限の延長に関する事項についての定めをすることを禁止し,その反面,契約にあたり,遅延利息,増(まし)担保の請求等,適正な債権管理のために必要な定めをすることを義務づけている。また,使途を特定した国の貸付金に係る契約については,上記事項に加え,貸付金の使途方法全般の規制に関する事項の定めをするものとしている(第5章)。
物品管理法
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

国の債権の管理等に関する法律
くにのさいけんのかんりとうにかんするほうりつ

昭和 31年法律 114号。国の財産の一種である金銭債権の管理の適正を期するため,管理のしかたの一般的原則を定めた法律。この法律は国の債権はその内容に応じて財政上最も国の利益にかなうよう管理すべきものとし,債権管理機関,管理の方法 (債権の記録,履行の請求,債権の保全など) のほか,国の債権の内容変更,免除の基準,債権を発生させる契約の基本的事項などについて規定する。なお,国の金銭債権のうち,罰金,科料,証券化された債権など一定のものには,この法律は適用されない。

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世界大百科事典(旧版)内の国の債権の管理等に関する法律の言及

【物品管理法】より

…国の財産の管理に関して,国有財産については日本国憲法下において1948年に国有財産法が制定されたが,物品については,物品管理法の公布まで物品会計規則(1889公布)の下に不十分な管理が行われていた。この法律の公布と同年に債権の管理についての法律(国の債権の管理等に関する法律)も制定され,財政法を基本法としつつ,会計法,〈予算決算及び会計令〉とあいまって,国の財政法体系がほぼ整備されることになった。物品は,国の行政活動の手段として所有する動産(備品等あるいは事務用品,事業用品等)であるが,その財産価値の保持というよりそのものの効用に着目した概念であり,この法律では,まず,物品を所管する各省各庁の長がその供用および処分の目的に従った分類をするものとしている(3条)。…

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