精選版 日本国語大辞典 「図」の意味・読み・例文・類語
ず ヅ【図】
〘名〙
① 人や物の形や様子などを描いたもの。絵。絵画。
※今昔(1120頃か)六「天竺より胎蔵界の曼陀羅の図を震旦に持来て」 〔漢書‐芸文志〕
② 地図。図面。
※東南院文書‐神護景雲元年(767)一一月一六日越中国司解「検二校東大寺墾田野地并図一、具件如レ前」 〔戦国策‐燕策下・王喜〕
③ 奈良・平安前期、全国的に作製され、民部省・国衙に保管された田地の図。耕作者と耕作状況が記載されている。
※承和二年東寺領国判(835)「捌野田里〈略〉陸坪参段拾捌歩 東寺。図一町七反東寺」
④ 条里制の条(じょう)の別称。八世紀頃、田地を直交する条と里(り)により地割し、一辺六町の正方形の田地の区画を作った。その一方の区画線。
※高野山文書‐保延元年(1135)一二月二九日・某庄田畠桑并在家等検注状案「一図 一里三町七段百二十歩」 〔日知録‐巻二二・図〕
⑤ 光景。様子。事柄。
※虎明本狂言・居杭(室町末‐近世初)「此おやしきの図は、五百八十年、万々年、御寿命長おん富貴御子孫御はんじゃう、めでたひおやしきで御ざる」
※抱擁(1973)〈瀬戸内晴美〉二「匡子が街を歩いたり、買物をしたりしている図を想像することも出来ない」
⑥ 物事の正しい基準、やり方などを書き表わしたもの。また、その基準。
※教訓抄(1233)七「まづ舞曲の体拝を習ふといふは、その図(ヅ)あるべし」
⑦ 数学で、点、線、面などの集合でできている形。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
⑧ 限り。際限。方図。→図(ず)がない。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)四「我も又世の中の大臣共がせぬ、図にはづれた事をせん」
⑨ あれこれ考えて立てたてだて。趣向。工夫。考案。計画。また、はかりごと。
※太平記(14C後)二九「則ち京都へ寄られ候はば、などか思ふ図に合戦一度せでは候ふべき」
⑩ 予期したところ。ねらいどころ。ねらう時期。よい機会。思うつぼ。ずぼし。
※史料編纂所本人天眼目抄(1471‐73)六「百の物は百、二百の物は二百に買が図のねだぞ」
※歌舞伎・夜討曾我狩場曙(1874)序「とやせんかくやと思ふ内、又候工藤左衛門が富士野の狩は天の与へ、この図を外さず討取らんと」
と【図】
〘名〙
① 絵。絵図。ず。
② はかりごと。計略。
③ 中国の伝説で、伏羲氏のとき、太平の瑞祥として黄河から神秘な図形を背に描いた龍馬があらわれたというその図。八卦のもととなったとされる。河図(かと)。
※懐風藻(751)仲秋釈奠〈藤原万里〉「悲哉図不レ出、逝矣水難レ留」 〔易経‐繋辞上〕
ず‐・す ヅ‥【図】
〘他サ変〙
① 絵として描く。
※今昔(1120頃か)六「再び大曼陀羅を図して大壇場を儲く」
② 意図する。はかる。
※正法眼蔵(1231‐53)古鏡「坐禅はなにごとをか図する」
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