因襲(読み)いんしゅう(英語表記)convention

翻訳|convention

日本大百科全書(ニッポニカ) 「因襲」の意味・わかりやすい解説

因襲
いんしゅう
convention

停滞的な社会に伝承された社会規範、とくに慣習で、合理的、進歩的観点から価値が疑われ、あるいは否定されているもの。しきたり、伝統、迷信などともいわれ、村落職能団体あるいは一定の地域や階層など限られた範囲に行われる。社会の拡大、人間精神の合理化、進歩発展の要請という人間世界の大勢からすれば、小社会の昔ながらの古い慣習は、それを妨害するものであるから、新しい社会規範、あるべき規範からみて因襲と評価されるのも当然で、その超克が必要となる。しかし因襲といわれるものも、それなりの合理性が実体的にあったからこそ成立したのであり、この点を無視するのは正確な見方ではない。また因襲の評価が当該社会のなかからでなく、外からなされる場合には、むしろ文化の衝突であり、社会的、政治的対立を反映することもあるから、結論には注意が必要である。

[千葉正士]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「因襲」の読み・字形・画数・意味

【因襲】いんしゆう(しふ)

従来のしきたりによる。風習慣例。〔史記、亀策伝序〕孝・孝景、掌故に因し、未だ試に遑(いとま)あらず。

字通「因」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「因襲」の意味・わかりやすい解説

因襲
いんしゅう
convention

因習とも書く。共同体によって保たれてきた伝統的な行動様式であるが,違反した場合に,その共同体からの非難制裁が伴う点において,単なる慣習とは異なる。共同体の結束のためには大きな力となってきたが,最近では都市化に伴う社会・文化的諸条件の変化によって消滅しつつある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android