四聖(読み)ししょう

精選版 日本国語大辞典 「四聖」の意味・読み・例文・類語

し‐しょう ‥シャウ【四聖】

(「しょう」は「聖」の呉音) 仏語。
[1] 〘名〙
① 十界を凡・聖に分けた時の声聞・縁覚・菩薩・仏の総称
※日蓮遺文‐観心本尊抄(1273)「四聖冥伏不現委細尋之可之」
② 「ししょうしゅ(四聖種)①」の略。
海道記(1223頃)序「四聖の無為を契しも一聖猶頭陀の路にととまりき」
[2]
[一] 禅林で用いる阿彌陀仏観世音菩薩大勢至菩薩、大海衆菩薩の称。〔勅修百丈清規‐住持章第五遷化〕
[二] 鳩摩羅什(くまらじゅう)弟子、道生・僧肇・道融僧叡四人の称。〔仏祖統紀‐三六〕
[三] 東大寺創立に際しての、聖武天皇婆羅門僧正行基良弁(ろうべん)の四人の総称。
神皇正統記(1339‐43)中「天皇・波羅門僧正・行基・朗弁をば四聖とぞ申伝たる」

し‐せい【四聖】

(四人の聖人の意)
[一] 釈迦キリスト孔子ソクラテスの四人の総称。
[二] 中国で四人のすぐれた師。尹伊・務成・太公望・老子の総称。
※日蓮遺文‐開目抄(1272)「尹伊は堯王の師、務成は舜王の師、太公望は文王の師、老子は孔子の師なり。此等を四聖とがうす」
[三] 東大寺の創立に際しての聖武天皇・婆羅門僧上・行基・良弁(ろうべん)の四人の総称。
※米沢本沙石集(1283)五末「東大寺を四聖(シセイ)同心の寺と云へるは」

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デジタル大辞泉 「四聖」の意味・読み・例文・類語

し‐しょう〔‐シヤウ〕【四聖】

菩薩ぼさつ縁覚えんがく声聞しょうもん

阿弥陀仏観世音菩薩大勢至菩薩大海衆だいかいしゅう菩薩。
鳩摩羅什くまらじゅうの弟子の、道生僧肇そうじょう・道融・僧叡そうえい
東大寺の、本願主聖武天皇開基良弁ろうべん勧進行基導師菩提僊那ぼだいせんな

し‐せい【四聖】

釈迦しゃかキリスト孔子ソクラテスの四人の聖人。→四聖ししょう
[類語]聖人聖者聖女聖賢聖哲ひじり君子仁者生き仏生き神

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「四聖」の意味・わかりやすい解説

四聖
しせい

4人の聖人の意。世界では4人の偉大な思想家である中国の孔子(こうし)、インドの釈迦(しゃか)、ユダヤのイエス・キリスト、ギリシアのソクラテスをいい、日本では奈良時代の仏教家として著名な聖武(しょうむ)天皇、婆羅門(ばらもん)僧正、行基(ぎょうき)、良弁(ろうべん)をさす。なお仏教では、十界の上位にある仏界、菩薩(ぼさつ)界、縁覚(えんがく)界、声聞(しょうもん)界を聖なる世界の意で四聖の名でよぶ。

[田所義行]

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世界大百科事典(旧版)内の四聖の言及

【東大寺】より

…金鐘寺以来当寺の建立に尽力した良弁(ろうべん)は,同年5月に東大寺別当に補せられ,諸大寺の別当職の先例を開いた。中世には発願聖武天皇,開眼師菩提僊那,勧進行基と良弁を四聖と称し,4人の協力による創建とみて,四聖建立の伽藍ともいわれた。造営をつかさどった造東大寺司は四等官により構成され,工事に名を伝えた工匠として大仏師国中連公麻呂,大鋳師高市大国・真麻呂・柿本男玉,大工(おおいたくみ)猪名部百世・益田縄手や仏師李田次麿などが有名で,公民の力役による労働力と,信仰により自発的に奉仕した者も多かったことは《造寺材木知識記》で判明する。…

※「四聖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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