四ホウ酸ナトリウム(読み)シホウサンナトリウム

化学辞典 第2版 「四ホウ酸ナトリウム」の解説

四ホウ酸ナトリウム
シホウサンナトリウム
sodium tetraborate

Na2B4O7(201.22).無水物および数種類の水和物がある.天然に産出するホウ砂は,Na2B4O7・10H2Oとみなされる.このほか,カーン石(kernite)(四水和物),チンカルコ石(tincalconite)(五水和物)などがある.ホウ砂の水溶液から,60 ℃ 以下で十水和物,60 ℃ 以上で五水和物が析出する.十水和物結晶を100 ℃ で加熱脱水すると五水和物になり,125 ℃ で二水和物,180 ℃ で一水和物,約350 ℃ で無水塩となる.無水塩はガラス状の固体.密度2.37 g cm-3.融点741 ℃.工業的な用途に用いるホウ砂は,天然産のホウ砂を精製して用いるほか,各種のホウ酸塩鉱物を粉砕し,水,ソーダ灰などを加え,加圧,加熱してつくられる.十水和物(ホウ砂)は単斜晶系.密度1.723 g cm-3.平面三角形型のBO3 2個と正四面体型BO4 2個が結合してできた陰イオンで,構造上はNa2[B4O5(OH)4]・8H2Oである.四水和物(kernite)は単斜晶系.密度1.953 g cm-3.構造式Na2[B4O6(OH)2]・3H2Oで,正四面体型のBO4と平面三角形型のBO3が酸素共有で鎖状につながった構造.無水塩は三方晶系で,BO3とBO4が,酸素共有で三次元的に結合している.工業的に,ホウ酸,そのほか多くの物質の製造原料になる.ホウ砂を溶融した小球に金属塩をつけて再溶融すると,金属特有の色が現れる.これをほう砂球反応といい,定性分析に利用される.ホウ砂は,ホウロウ,ガラス,陶磁器うわぐすりに用いられるほか,はんだ付け用融剤,洗剤染色,皮なめし,防炎剤,木などの防腐・防食剤,農薬殺虫剤(ゴキブリ用など)にも用いられる.[CAS 1303-96-4:十水和物][CAS 12045-87-3:四水和物][CAS 1330-43-4:無水塩]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の四ホウ酸ナトリウムの言及

【ホウ酸ナトリウム(硼酸ナトリウム)】より

…オルトホウ酸塩Na3BO3(xy=3:1)は知られていない。
[四ホウ酸ナトリウムsodium tetraborate]
 化学式Na2B4O7。10水和物Na2B4O7・10H2Oがホウ砂boraxの名称でよく知られ,白色半透明の鉱物として,北アメリカ西部の砂漠地帯,中部アジアの砂漠中のかん(鹹)湖の沈殿物中に存在する。…

※「四ホウ酸ナトリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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