囂・喧(読み)かしがましい

精選版 日本国語大辞典 「囂・喧」の意味・読み・例文・類語

かしがまし・い【囂・喧】

〘形口〙 かしがまし 〘形シク〙 (古くは「かしかまし」)
① 声や音が、耳ざわりなほど騒々しい。やかましい。かしましい。かまびすしい。
古今(905‐914)雑体・一〇一六「秋の野になまめきたてる女郎花あなかしかまし花も一時〈遍昭〉」
源氏(1001‐14頃)東屋「かしかましきまで追ひののしりて」
② ちょっとしたことにもとやかく言う。口うるさい。
※平中(965頃)二七「わびしくさがなき朽嫗(くちをな)の、〈略〉かしかましきものなりければ」
③ いろいろ入りまじって煩わしい
連理秘抄(1349)「言葉あらく景物おほく、かしかましきやうにて付けにくきは、下品の句也」
[語誌](1)「かし」は「かしまし」の「かし」と通じ、「かま」は「かまし」「かまかまし」「かまびすし」の「かま」で、いずれもほぼ同意の語である。
(2)近世以後第三音節が濁音となったが、接尾語「がまし」との類推近接によるか。
かしがまし‐げ
〘形動〙
かしがまし‐さ
〘名〙

かま‐びすし・い【囂・喧】

〘形口〙 かまびすし 〘形シク〙 (古くはク活用。鎌倉初期ごろからシク活用があらわれたらしい。→かまびすし)
① (音や声が)やかましい。さわがしい。かしましい。かまみすし。
方丈記(1212)「波の音、常にかまびすしく、しほ風ことにはげし」
東京日日新聞‐明治一六年(1883)八月三日「先般来名古屋にて松平良七の松平慶承が公判を開かれしに、一般の評判囂すしく」
[語誌]ク活用の「かまびすし」は元来は漢文訓読語で、中古和文では「かしがまし」が用いられた。中世以後も主に文語的文体の中で使われ、それに対応する口語は、中世では「かしまし」、近世では「やかまし」「さわがし」であった。
かまびすし‐さ
〘名〙

かま‐びす・し【囂・喧】

〘形ク〙
※為相本曾丹集(11C初か)「かまびすくすだきし虫も声やみていまは嵐の音ぞはげしき」
② 困窮するさまをいう。〔和訓栞(1777‐1862)〕
[語誌]→「かまびすしい」の語誌

かま【囂・喧】

[1] (形容詞「かまし」の語幹) うるさいこと。やかましいこと。感動詞「あな」に続けて用い、うるさい、静かにせよの意で人を制する。→あなかま
[2] 〘名〙 =かま(鎌)

かま‐びそし【囂・喧】

〘形シク〙 (「かまびすし(囂)」の変化した語) =かまびすしい(囂)
※太平記(14C後)二四「爰に近年禅法之興行天下に喧(カマビソシ)

かま・し【囂・喧】

〘形ク〙 (単独使用の確例はないが、「あなかま」の「かま」がこれの語幹と考えられるところから、ク活用と推定される。なお、「かまかまし」「かまみすし」「かまびすし」の「かま」も、これの語幹であろう) =かまびすし(囂)

かま‐みす・し【囂・喧】

〘形ク〙 =かまびすし(囂)〔金光明最勝王経音義(1079)〕

かま‐びすし【囂・喧】

〘形シク〙 ⇒かまびすしい(囂)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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