問状(読み)といじょう

精選版 日本国語大辞典 「問状」の意味・読み・例文・類語

とい‐じょう とひジャウ【問状】

〘名〙
中世幕府の訴訟制度で原告訴人)の訴状を受けた裁判所被告論人)の答弁を求めるために出した催促状。もんじょう。
御成敗式目(1232)五一条「右就訴状問状者定例也」
② 転じて、罪を問いただすこと。拷問などを伴う厳しい訊問。吟味
※浄瑠璃・義氏(1651)三「此女がしらぬ事は候まじ、七度八度のとひしゃうをかけ、責おとさせたまへや」
③ 質問の次第。質問。
浮世草子世間妾形気(1767)四「今はさらりとつまらぬぞ、どうする心と引きよせてのとひ状に」

もん‐じょう ‥ジャウ【問状】

〘名〙
① 答弁を求めるための書状質問状
※十問最秘抄(1383)序「若(も)賢慮、違する事あらば、かさねて問状を出ださるべしと也」
② 中世、幕府の訴訟制度で、訴人(原告)が訴状を提出すると、裁判所がこれを論人(被告)に伝えて弁明を求めるために出す文書。問状御教書・問状奉書などの形式がある。といじょう。〔日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「問状」の意味・読み・例文・類語

もん‐じょう〔‐ジヤウ〕【問状】

答弁を求めるための質問書
鎌倉・室町幕府の訴訟制度で、訴人(原告)の訴えを受理したとき、論人(被告)や証人に対して答弁を求めるために出した文書。といじょう。

とい‐じょう〔とひジヤウ〕【問状】

もんじょう(問状)

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改訂新版 世界大百科事典 「問状」の意味・わかりやすい解説

問状 (といじょう)

〈もんじょう〉ともいう。日本の古文書の一様式。中世の訴訟制度において裁判機関が当事者や証人を勘問する際発給した文書。とくに訴状受理の後,それに対する陳状の提出を論人(被告)に命ずるために,裁判機関より発給された問状がよく知られている。綸旨りんじ),御教書(みぎようしよ)(この場合,問状綸旨,問状御教書と称す),担当官人(引付頭人(ひきつけとうにん)や奉行など)の奉書,またより丁重な場合は書状の形式がとられた。某が該案件を訴え出たのでその訴状を送付するから陳弁せよというのがそのおもな内容で,末尾に〈早可令弁申〉〈不日可被明申〉などの陳弁催促の文言を有するのが特徴である。中世には訴訟の当事者主義の原則により,問状の論人への交付は訴人自身が行ったが,その際しばしば〈問状の御教書を帯び狼藉をいたす〉(《御成敗式目》51条)という事態が発生した。これは訴訟の受理自体が,ある程度訴えの蓋然性の認定を意味していたためでもあり,また相論の自力救済を目ざす訴論人にとっては,問状の獲得のみで勝訴を強弁せんとする法意識が一般であったためでもある。
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普及版 字通 「問状」の読み・字形・画数・意味

【問状】もんじよう

訊問する。

字通「問」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の問状の言及

【問状】より

…中世の訴訟制度において裁判機関が当事者や証人を勘問する際発給した文書。とくに訴状受理の後,それに対する陳状の提出を論人(被告)に命ずるために,裁判機関より発給された問状がよく知られている。綸旨(りんじ),御教書(みぎようしよ)(この場合,問状綸旨,問状御教書と称す),担当官人(引付頭人(ひきつけとうにん)や奉行など)の奉書,またより丁重な場合は書状の形式がとられた。…

※「問状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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