商品鑑定(読み)しょうひんかんてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「商品鑑定」の意味・わかりやすい解説

商品鑑定
しょうひんかんてい

商品の種類、真偽、品質の良否を明らかにして、その価値や効用の大きさを判定すること。商品鑑定のうち、法律などに定められた方法によって実施するものには商品検査や格付検査などがあり、消費者の立場から実施するものは商品テストとよばれ、公正な取引や消費の合理化を図るうえできわめて重要な役割を果たしている。また、企業が行う出荷検査や仕入検査もこれに類するものである。

 商品の鑑定は物理的な性質と化学的性質に分けて行われる。物理的性質としては、寸法、形態、色沢、比重、強度、硬度、伸度、粘度、融点、沸点、凝固点、引火点、屈折率、繊度、正量、偽和物、組織などがあげられ、化学的性質としては、成分、組成試薬に対する化学反応などがある。さらにこれらの実質的な品質要素以外に、商品の均整度、瑕疵(かし)なども鑑定項目として採用されている。

 商品鑑定の方法は経験的鑑定法と科学的鑑定法に2大別される。前者は商用鑑定法ともよばれ、鑑定者の五感視覚触覚味覚嗅覚(きゅうかく)、聴覚)によって鑑定するものである。方法が簡便で迅速に行われ、多額の経費も要しないため、古くから商取引あるいは製造現場で利用されているが、生産問屋や産地問屋の段階での検品やグレード決定などのように継続的に判定している玄人(くろうと)以外の場合、鑑定結果に個人差があり客観性に乏しい欠点がある。科学的鑑定法は自然科学の原理を応用した、特殊な機械・装置・試薬を使用する客観的方法である。専門的技術と設備を必要とするので、大規模な製造業者や百貨店以外は、国・公立民間の専門的検査機関、大学などの学術研究機関に依頼することが多い。しかしデジタル技術の進歩とともに1990年代ごろから計測機器が電子化されたため、生産者や流通業者が簡便に判定できるようになってきた。たとえば、果実の選果では、屈折糖度計からデジタル糖度計にかわり、非破壊で自動的に糖度を測定する光センサー糖度計が普及してきている。一方、現代の商品は、複雑で電子化されたものが多くなり、技術開発と品質管理の高度化によって商品それぞれの品質には近似性がみられるとともに、電子化された商品は消費者の五感による判断では対応しきれなくなっており、鑑定がよりむずかしくなってきている。また商品に環境ホルモンが含まれるような場合、それがごく微量であっても問題となるため確実に検出する必要がある。したがって鑑定にはより高い精度が要求され、科学的鑑定法の重要性はより高まっている。

 技術水準の低かった第二次世界大戦前後の日本の商品は「安かろう悪かろう」という意味でチープグッズとよばれた。そこで、戦前の日本標準規格(JES(ジェス):Japanese Engineering Standards)にかわって、1949年(昭和24)には「工業標準化法」による日本工業規格(JIS(ジス))が制定され、多くの工業製品に格付検査が行われるようになった。さらに輸出振興による外貨獲得のため、輸出品には1957年から「輸出検査法」による強制検査が行われ、メイド・イン・ジャパンmade in Japan(日本製)の品質やそのイメージを維持する点で大きく貢献した。その後日本の工業製品の品質管理は世界のトップレベルに達し、規制緩和の流れもあって、輸出検査法は1997年(平成9)に廃止された。しかし食肉流通のための「と畜場法」(食品衛生上の危害の発生を防止するため、と畜場の経営と食用獣畜の処理に必要な規制その他の措置を講じるための法律。1953年制定)による安全・衛生上の検査や、日本農林規格(JAS(ジャス))などの格付検査は実施されており、品質管理に一定の機能を果たしている。なお輸入の際の検査は、輸入量の増加から、すべての商品の検査はできず、国内法に抵触していそうな商品のみの抜取り検査が行われ簡略化されている。また2000年代に入り急速に進んだ情報技術等による世の中の変化に対応するため、2019年(令和1)「工業標準化法」は「産業標準化法」に改められた。これに伴い、日本工業規格が標準化の対象としていた鉱工業品等に、データ、サービス等が追加され、規格名も日本産業規格に変更された。なお英語名称のJIS(Japanese Industrial Standards)は法改正後も継続されている。

[青木弘明・大竹英雄]

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