唱・称(読み)となえる

精選版 日本国語大辞典 「唱・称」の意味・読み・例文・類語

とな・える となへる【唱・称】

〘他ア下一(ハ下一)〙 とな・ふ 〘他ハ下二〙
① 声を立てて読む。誦す。うたう。うたいだす。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「時に陰(め)神、先づ唱(トナヘ)て曰(のたま)はく、憙哉(あなうれしゑや)、可美少男(うましをとこ)に遇ひぬ」
※二度本金葉(1124‐25)雑下「阿彌陀仏ととなふる声を梶にてや苦しき海をこぎ離るらん〈源俊頼〉」
② 高く呼ぶ。叫ぶ。
※名語記(1275)五「興々の音をとなへて、国中興複の義ありき」
③ 人に先立って言う。首唱する。唱導する。
※制度通(1724)叙「儒者誦法聖人之道。以倡当世。世之人謂儒者之道」
④ 主張する。いいはる。
死霊‐二章(1946‐48)〈埴谷雄高〉「わしが訊いているのは、わしの話に異論をとなえる理由についてじゃよ」
⑤ 名づけていう。呼ぶ。称する。
※交隣須知(18C中か)三「馬上才 ハ上ノ ゲイハ アマタ コサリマスレドモ スベテ キョクバト トナエマスル」
⑥ 相場取引で高値をつける。
[補注]室町時代ごろからヤ行にも活用した。→となゆ(唱)

となえ となへ【唱・称】

〘名〙 (動詞「となえる(唱)」の連用形の名詞化)
① 声を立てて読むこと。また、神などに祈ること。
※羅葡日辞書(1595)「Carmen〈略〉マジュツヲ ヲコナウ tonaye(トナエ)
② 呼び名。称号。名称。
※天草本平家(1592)読誦の人に対して書す「イチニンニ アマタノ ナ、クヮンイ ノ tonaye(トナエ) アル コト」
③ 評判。
※評判記・色道大鏡(1678)一一「傾城の名は、風流なるをもて第一とす。となへてはこはしきもあれど、往古付来りたるは又しかり」

とな・ゆ【唱・称】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「となふ」から転じて室町時代頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「となゆる」の形をとる) =となえる(唱)
※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)二「一には、みぎの大ゆびにてくるすの文をひたひとくちとむねにとなゆるなり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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