和田寿郎(読み)わだじゅろう

百科事典マイペディア 「和田寿郎」の意味・わかりやすい解説

和田寿郎【わだじゅろう】

外科医・大学教授。北海道生れ。北海道帝国大学(現,北海道大学)医学部卒業。アメリカに留学した際,南アフリカ心臓外科医クリスチャン・バーナード知己(ちき)を得た。のち札幌医科大学教授,東京女子医科大学教授,日本胸部外科学会会長などを務めた。札幌医科大学時代の1968年に,溺れた男子大学生を脳死判定,提供された心臓を18歳の男性患者に移植する日本初の心臓移植手術を行った。しかし,患者は手術後83日目に死亡した。そのため脳死判定が適切だったのか,患者は移植を必要としていなかったのではないかなどさまざまな疑問が出され,和田自身も殺人罪などで刑事告発されたが,不起訴処分となっている。この結果,1997年の臓器移植法施行まで脳死移植に関わる空白期間が生じたといわれる。なお,当時同じ札幌医科大学に勤務していた作家の渡辺淳一は,〈和田の手術の技量はずば抜けていたが,脳死判定は間違いで,脳死移植に対しての国民の拒絶反応を強くしてしまった〉と語っている。→臓器移植脳死判定基準

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「和田寿郎」の解説

和田寿郎 わだ-じゅろう

1922-2011 昭和後期-平成時代の外科学者。
大正11年3月11日生まれ。昭和32年札幌医大教授となる。52年東京女子医大教授,62年和田記念心臓肺研究所長。43年日本最初の心臓移植手術をおこなう。その脳死判定や移植の必要性をめぐって告発されたが,不起訴となった。平成23年2月14日死去。88歳。北海道出身。北海道帝大卒。著作に「ゆるぎなき生命の塔を」など。

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