和布刈神事(読み)めかりしんじ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和布刈神事」の意味・わかりやすい解説

和布刈神事
めかりしんじ

ワカメを刈り取って神前に供える神事関門海峡を挟む福岡県北九州市門司区の和布刈神社(めかりじんじゃ)と山口県下関市一の宮の住吉神社旧暦みそかの深夜(元日未明)に,島根県出雲市大社町の日御碕神社(末社熊野神社)では新暦と旧暦の 1月5日に行なわれる。日御碕神社では,漁師が刈り取ってきたワカメを神饌として供えるが,和布刈神社と住吉神社では,神職が夜中に松明あかりを頼りに海に入り,ワカメを刈り取る。また,住吉神社では,ワカメを刈り取りに行く前に,神職が壇ノ浦火立岩のそばで餅を焼いて食べる行事がある。和布刈神社では,神功皇后武運航海安全を祈願してワカメを供えたのが始まりと伝えられており,かつては「神職が海に入ると潮が二つに割れて海に道ができる」「神事を見ると目がつぶれる」などといわれ,氏子たちはこの晩固く門戸を閉じ,停泊中の船も消灯していた。

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改訂新版 世界大百科事典 「和布刈神事」の意味・わかりやすい解説

和布刈神事 (めかりのしんじ)

一般には和布刈祭と呼ばれており,旧暦の大晦日夜半から元旦にかけて同時に,山口県下関市住吉神社と福岡県北九州市門司区の和布刈神社(隼人明神,早鞆(はやとも)様とも呼ばれる)で行われる神事。両神社とも神功皇后の三韓征伐伝承に深い関係をもつといわれ,住吉神社の社伝では最初の神主践立(ほんだち)命が神功皇后の命により壇ノ浦の和布(ワカメ)を刈り,元旦の供え物としたことから始まるとされる。また和布刈神社の社伝では安曇磯良(あずみのいそら)が海底に入って,皇后に潮干珠,潮満珠の法を授けたことに由来するとされている。神事の次第は両神社ともほぼ共通で,住吉神社の場合は秘事として公開されていないが宮司以下の神職ら7人が神前で出向の祝詞奏上のあと,松明に火を点じて壇ノ浦の火立岩へと向かい,そこで海神に神饌を供え,祝詞奏上などのあと干潮時の海中に入り,和布刈鎌で海底からワカメを刈りとる。ワカメは元旦の神饌に供され,開運和布として参拝者にもわかたれる。生命力の象徴であるワカメにちなんだ,元旦にふさわしい神事とされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和布刈神事」の意味・わかりやすい解説

和布刈神事
めかりのしんじ

福岡県北九州市門司(もじ)区和布刈町に鎮座する和布刈神社(旧県社)で旧暦12月晦日(みそか)から元旦(がんたん)の未明にかけて執行される特殊神事。関門海峡を隔てた対岸に鎮座する住吉(すみよし)神社(旧官幣中社)でも同日同時刻に同神事を執行する。深夜午前1時から3時ごろの干潮時に神職3人が正装し、鎌(かま)と松明(たいまつ)を持って海中に入り、和布(わかめ)を刈り取って神前に供える神秘の行事。この和布は万病に効くと伝えられ、朝廷にも献上した。神功(じんぐう)皇后がいわゆる「三韓(さんかん)征伐」のため付近を航海中に安曇磯良神(あずみいそらのかみ)が海中より献上した如意珠(にょいじゅ)を使って三韓を征したが、皇后が磯良神より潮干・潮満の法を学んだ遺風を伝えるのがこの神事という。元旦最初の神供として土地所産の供物を採取する意義がある。

[薗田 稔]

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百科事典マイペディア 「和布刈神事」の意味・わかりやすい解説

和布刈神事【めかりのしんじ】

福岡県北九州市門司の和布刈神社と対岸の山口県下関市住吉神社で,旧暦12月晦日(みそか)の夜から元旦にかけて同時に行われる神事。1000年余り前に始められた古神事で,和布刈鎌を持った神官が深夜の海に入り,松明(たいまつ)の明りでワカメを刈り神前に供える。旧暦正月5日には島根県日御碕(ひのみさき)神社でも行われる。
→関連項目門司[区]

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