精選版 日本国語大辞典 「命」の意味・読み・例文・類語
いのち【命】
〘名〙
① 人間や生物が生まれてから死ぬまでの、生存の持続。
(イ) 継続されるべき、ただし限りのある生の力。生命。また、寿命。
※古事記(712)中・歌謡「伊能知(イノチ)の、全けむ人は」
(ロ) 生まれてから死ぬまでの期間。生涯。一生。
※読本・雨月物語(1776)貧福論「天蒼氏(てんそうし)の賜(たまもの)すくなくうまれ出たるなれば〈略〉いのちのうちに富貴を得る事なし」
② さまざまの角度からとらえた生存の意義。
(イ) 天から与えられた定め。運命。天命。〔観智院本名義抄(1241)〕
(ロ) 生存をつづけるための、物的または心的なよりどころ。唯一のたのみ。生き甲斐。→命にて。
※後撰(951‐953頃)夏・一九三「常もなき夏の草葉に置く露をいのちとたのむ蝉のはかなさ〈よみ人しらず〉」
(ハ) 物事をそのものたらしめる本質的な価値。そのもの独特のよさ。真髄。また、一番大切なところ。
※風姿花伝(1400‐02頃)三「能をせん程の者の、和才あらば申楽を作らん事易かるべし。これ此道のいのち也」
(ニ) 人の世の中に生きつづける、物事、作品などの価値。
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉六「詩の命(イノチ)は事実より確かです」
③ (生きるよりどころの意味から特殊化して) 一生をそれに捧げてもよい誠意を示す証拠立ての文字、また、転じてその語。多く遊里に行なわれた習慣で、相愛の男女が互いに二の腕へ「命」の一字、または「誰々命」と入れ墨して、二世も三世もと誓った。
※評判記・色道大鏡(1678)六「命(イノチ)の字を名の下にしるす事、古代よりありて」
めい【命】
〘名〙
① まわりあわせ。運命。天命。
※万葉(8C後)五・沈痾自哀文「孔子曰、受二之於天一、不レ可二変易一者形也、受二之於命一、不レ可二請益一者寿也」
※十訓抄(1252)九「命をしれるものは天を恨みず。をのれを知者は人を不レ恨と」 〔論語‐子罕〕
② いのち。生命。寿命。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「つはもののためにめいをはり」 〔論語‐憲問〕
※今昔(1120頃か)一「湏達を七日が間、舎衛国の王と可為し〈略〉国の大小の事、湏達が命に可随し」
※平家(13C前)一二「主君の命をおもんじて、私の命(いのち)をかろんず」 〔書経‐仲虺之誥〕
めい‐・ずる【命】
〘他サ変〙 めい・ず 〘他サ変〙
① 言いつける。命令する。命じる。また、任命する。また、注文する。
※正法眼蔵(1231‐53)心不可得「ちなみに国師に命じて試験せしむるに」
※史記抄(1477)三「微子開を宋に封ずるとき命した辞ぞ」
② 名称をつける。名づける。命名する。
※授業編(1783)五「著書の名目も後人のごとくさまざまに索め考えて命ずる事なく」
③ (特に「命ぜらる」の形で) おっしゃる。
※徒然草(1331頃)二一九「四条黄門命ぜられて云はく」
めい・じる【命】
〘他ザ上一〙 (サ変動詞「めいずる(命)」の上一段化したもの) =めいずる(命)①
※和英語林集成(初版)(1867)「Meiji, jiru(メイジル), または、dzru, jita メイズル 命」
めい‐・ず【命】
〘他サ変〙 ⇒めいずる(命)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報