呼出(読み)よびだし

精選版 日本国語大辞典 「呼出」の意味・読み・例文・類語

よび‐だし【呼出】

〘名〙
① 出頭するように呼ぶこと。よびだすこと。召喚(しょうかん)
俳諧・文政句帖‐五年(1822)閏正月「大猫や呼出しに来て作り声」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一一「やがて学校に趣きしに、校長よりの呼出(ヨビダ)しあり」
② 江戸時代、訴状を受理した奉行所で訴訟関係者を召喚すること。また、その文書。呼出し状
※憲教類典‐四・六評定・寛保二年(1742)(古事類苑・法律五六)「一名主又者主人親兄を相手取候出入は、裏紙差紙不遣呼出遣す」
③ 江戸時代の銭湯で、陸湯(おかゆ)をくみ出す枡形の所。呼出し口。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「浄湯(をかゆ)をくむ升形の所を呼出(ヨビダ)しといふはな」
④ 相撲で、取り組む力士の名を呼び上げて土俵に上らせたり、土俵の整備や取組の進行、あるいはやぐら太鼓を打ったりする役。また、その者。前行司。呼出し奴。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉一月暦「若い小男の呼出(ヨビダ)しが、既に土俵の真中に馳(か)け上って」
⑤ 江戸新吉原で、遊女の格の一つ。太夫・格子の位がなくなった寛政一七八九‐一八〇一)の頃、散茶から出て太夫・格子に代わったものの称。張見世をしないで、茶屋を通して交渉し、遊興に応じた。細見記には入山形に星(または)の印で示し、「よびだし」と付記してある。呼出しおいらん。呼出し女郎。
※洒落本・禁現大福帳(1755)四「足下(そこ)の悟道は暫契(ヨビダシ)を迎に来る」
⑥ 江戸深川などの岡場所で、求めに応じて茶屋などで客に接する女郎の称。呼出し芸子
※雑俳・柳多留‐五(1770)「呼出しは晴天八日きゃくかふへ」
⑦ 江戸吉原などの遊里で、女郎の逃亡・心中などを防止するために、夜間に行なう点呼のこと。
連歌・俳諧で、恋や花の句を上手につけさせるために詠む前句。
⑨ 義太夫節の三味線で、事件が一段落した後、新しい人物の登場をつげる旋律を演奏すること。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)六「うしろうたふとは、呼出(ヨビダ)しのことかいな」
長唄囃子(はやし)で、大小鼓の頭(かしら)高音掛け声で同時に打ち、次句の唄を引き出す手法。
電話などを用いて、指定の場所に商品などを持って来させ、その商品やつり銭を巧みにだまし取ることをいう、詐欺師仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕

よび‐だ・す【呼出】

〘他サ五(四)〙
① 呼び寄せる。呼んで来させる。出頭させる。めしだす。召喚する。呼びいだす。
※天草本平家(1592)二「メシ ツカワレタ ニョウバウ イチニン ヲ yobidaite(ヨビダイテ) タヅネラレタレバ」
② 呼んで外へつれ出す。呼んで誘い出す。呼びいだす。
魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後「夫では外へ呼出して談さうか」
③ 呼びはじめる。呼びいだす。
④ 電話の呼び出し音を鳴らす。電話口に出させる。
※つゆのあとさき(1931)〈永井荷風〉二「鳥渡電話を掛けてくれ。〈略〉京橋の丸丸番だよ。呼出してすぐにここへ来いって」

よび‐いだ・す【呼出】

〘他サ四〙
※蜻蛉(974頃)中「大夫よびいだして」
※平中(965頃)二九「月見よなど言ひて、よびいだしたり」

よび‐い・ず ‥いづ【呼出】

〘他ダ下二〙 =よびだす(呼出)
※竹取(9C末‐10C初)「竹とりをよび出てむすめを我にたべとふしをがみ」

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知恵蔵 「呼出」の解説

呼出

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