告文(読み)こうもん

精選版 日本国語大辞典 「告文」の意味・読み・例文・類語

こう‐もん カウ‥【告文】

〘名〙
① 神に申し上げることばを書き記した文書。奉告的な内容のものと、願意を含んだものとがある。宣命体で書くのをふつうとする。こうぶん。
※中右記‐寛治五年(1091)正月二八日「中宮立后之後、初有幣諸社、使宮司殿上人四位、但吉田許五位、先召大内記告文黄紙」
自分言動虚偽のないことを、神仏に誓ったり、相手に表明したりするために書く文書。こうぶん。強文(ごうもん)。→起請文(きしょうもん)①。
※看聞御記‐応永三一年(1424)五月一二日「仙洞女房事御所中女房達皆御糺明、随而卿相雲客十人許つつ結番被告文、三ケ日殿上に被召置祗候被失云々」
③ (━する) 起請行為をすること。
大乗院寺社雑事記‐文明元年(1470)六月一六日「大五輪寺舜識房昨日於十市所湯起請云云、律宗如文無先規沙汰也、可嘆々々」
④ 江戸時代、男女の愛情のかわらないことを誓った文書。こうぶん。→起請文

こう‐ぶん カウ‥【告文】

〘名〙
太平記(14C後)一二「七日が間御身を清め一巻の告文(カウブン)を遊して高山に登り」
※太平記(14C後)一「『先づ告文(カウブン)一紙を下されて、相模入道が忿(いかり)を静め候ばや』と申されければ」
評判記色道大鏡(1678)六「紙に書しるすを告文(コウブン)といふ、罪なきよし冥道に告げ訴るゆへなり」

こく‐ぶん【告文】

※歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立「三方に告文(コクブン)と錫の神酒徳利とをのせ持って出てくる」

つげ‐ぶみ【告文】

〘名〙 神に告げ奉る文。こうもん

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デジタル大辞泉 「告文」の意味・読み・例文・類語

こう‐もん〔カウ‐〕【告文】

神に対して申し上げること・願いごとなどを書き記した文書。つげぶみ。こうぶん。
自分の言動に虚偽のないことを、神仏に誓ったり、相手に表明したりするために書く文書。起請文きしょうもん。こうぶん。

こう‐ぶん〔カウ‐〕【告文】

こうもん(告文)

こく‐ぶん【告文】

こうもん(告文)

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改訂新版 世界大百科事典 「告文」の意味・わかりやすい解説

告文 (こうもん)

神仏に祈願の意を述べる文書。願文と同じ機能をもつが,宣命体の文章で書かれたものを告文といった。とくに天皇・上皇即位改元など重大なことについて,皇祖神や山陵に報告するための文書を指していうことが多く,山陵使らは,これを山陵や神前において微音で読み上げた後,焼きあげるのが本来であった。したがって,古い時代の告文は正文の形では残ることはありえない。ただ石清水八幡宮には,鎌倉初期の別当田中宗清の書写した《八幡宮寺告文部類》と題する書物が残されており,これによって平安時代の告文の書式を知ることができるし,草案の形で残されているものも少なくない。もっとも,中世にしばしば使われる告文という言葉は,以上とは別に,起請文(きしようもん)の別称としてであることが多い。起請文も神仏に祈った上で書き,誓うという点,性格の共通性があるためであろう。なお告文は,強文,剛文などとあて字が使われることもあるので,〈ごうもん〉とにごって読まれたようである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「告文」の意味・わかりやすい解説

告文
こうもん

「こうぶん」「ごうもん」とも読む。天皇から、神祇(じんぎ)に対し告げ申すことばを書き記した文の意と、臣下に告げ諭す文の意とがある。また一般には神仏への起請文(きしょうもん)、誓状(ちかいじょう)の別称としても用いられるほか、罪なき由を冥道(みょうどう)に告げ訴える文ともされる。文体は祝詞(のりと)と同じく宣命体(せんみょうたい)で書かれるのが原則。最初に述べた天皇からの告文は、正式には「御告文(ごこうもん/おつげぶみ)」という。1873年(明治6)には天皇親祭のときのものに限って御告文と称するようになり、従来、神社や山陵などに勅使が奏上した宣命は御祭文(ごさいもん)と改称された。

[森安 仁]

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普及版 字通 「告文」の読み・字形・画数・意味

【告文】こくぶん

祭文。

字通「告」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の告文の言及

【告文】より

…神仏に祈願の意を述べる文書。願文と同じ機能をもつが,宣命体の文章で書かれたものを告文といった。とくに天皇・上皇が即位・改元など重大なことについて,皇祖神や山陵に報告するための文書を指していうことが多く,山陵使らは,これを山陵や神前において微音で読み上げた後,焼きあげるのが本来であった。…

※「告文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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