呉織・呉服(読み)くれはとり

精選版 日本国語大辞典 「呉織・呉服」の意味・読み・例文・類語

くれ‐はとり【呉織・呉服】

(「くれはどり」とも。「はとり」は「機織(はたおり)」の変化した語)
[1] 〘名〙
① 呉(くれ)の国から渡ってきた織工。織物の技術者。また、その織工の名ともされた。
古事記(712)中「又、手人(てひと)韓鍛(からかぬち)名は卓素、亦、呉服(くれはとり)の西素二人を」
② 呉の国から伝来した手法による織物。綾模様のある絹織物
※後撰(951‐953頃)恋三・七一二・詞書「道にて人の志送りて侍りけるくれはとりといふ綾を二むら包みて遣はしける」
[2] 「くれ」に「来れ」「暮れ」などを掛けて用いることが多い。
① (一)②の織物に綾があるところから「あや」にかかる。「あやはとり」と併称されるからだともいう。
※後撰(951‐953頃)恋三・七一二「くれはとりあやに恋しくありしかば二村山も越えずなりにき〈清原諸実〉」
謡曲・安宅(1516頃)「これにつけてもなほなほ人に心なくれそ呉織(くれはどり)怪しめらるな面々」
② 「くれはどり」に鳥の意をこめて、鳥の縁で「音(ね)」につづく。また、「浮き寝」につづくとみて、その同音「憂き音」にかかるともする。
※謡曲・清経(1430頃)「聞くに心も呉織(くれはどり)憂き音に沈む涙の雨の」

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