吾妻川(読み)アガツマガワ

デジタル大辞泉 「吾妻川」の意味・読み・例文・類語

あがつま‐がわ〔‐がは〕【吾妻川】

群馬県中西部を流れる川。長野との県境にある鳥居峠付近に源を発し、東流して渋川市利根川に合流する。長さ76キロ。上・中流に渓谷があり、国指定名勝の吾妻峡がある。中・下流は河岸段丘が発達している。

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日本歴史地名大系 「吾妻川」の解説

吾妻川
あがつまがわ

利根川の支流で、吾妻郡の西端、四阿あずまや山とまる山の間にある嬬恋つまごい鳥居とりい(標高一三六二メートル)付近から流れ出る沢水を源流とし、吾妻郡を西から東へ貫く一級河川。北からは四阿山を水源とする大横おおよこ川、白根しらね山・万座まんざ山からの万座川、上信国境の横手よこて山・赤石あかいし山・大高おおたか山・白砂しらすな山から流れ出て草津くさつ六合くにの渓谷を流れる白砂川(古くは須川)、上越国境の山々より流れ出る四万しま(沢渡川を合せてからを山田川ともいう)、吾妻郡の東端で、沼田市との境権現ごんげん峠からの名久田なくた川を合せる。南側からは浅間山に源をもつ地蔵じぞう川などの諸川、浅間隠あさまかくし山と榛名はるな山より北側へ流れるぬる川を合流し、渋川市で利根川に合流する。延長七六・二キロ、流域面積一三六六平方キロであり、約一一五〇メートルの高度差を利用した水力発電も早くから行われてきた。

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改訂新版 世界大百科事典 「吾妻川」の意味・わかりやすい解説

吾妻川 (あがつまがわ)

群馬県北西部を東流して渋川付近で利根川と合流する川。幹川流路延長76km,全流域面積1366km2。おもな支川には四万川,温川,須川がある。流域は王城山,菅峰など第三紀末~第四紀前半に活動した南北に並ぶ古期火山列によって二分される。西方の上流域は四つの火山,浅間山,烏帽子山,草津白根山,四阿(あずまや)山のゆるやかなすそ野からなり,嬬恋(つまごい)高原と呼ばれる。嬬恋高原には厚い湖成層が分布し,10万年ほど前,浅間火山の成長によって,南流して千曲川に合流していた古吾妻川がせき止められ大きな湖(嬬恋湖)をつくったことを示す。嬬恋高原で広く栽培される高冷地キャベツは有名。浅間山北麓には別荘地が広がり,草津白根山腹には草津温泉,万座温泉などがあり,四季を通じて観光客でにぎわう。温泉や鉱山跡から流出する強酸性の水のためかつて吾妻川には魚もすまなかったが,1964年草津温泉の東に石灰を投入する中和工場がつくられ,コンクリートが溶解する危険がなくなり,品木ダム(1965)も建設された。古期火山列の東方の下流域も榛名・小野子・子持火山からなり,伊香保などの温泉がある。中之条盆地一帯にも湖成層が広く分布し,大きな湖がかつて存在したことが知られる。この地域ではコンニャクタバコなどが栽培されている。吾妻川中流の吾妻渓谷長野原町川原湯と東吾妻町松谷の間約4kmをいい,名勝(吾妻峡)に指定され,関東耶馬渓とも呼ばれる。川に沿って国道144号線(かつての大笹街道)と吾妻鉱山の鉱石輸送のための貨物線に始まる吾妻線(1971年長野原線を改称)が通じる。
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百科事典マイペディア 「吾妻川」の意味・わかりやすい解説

吾妻川【あがつまがわ】

群馬県西部の嬬恋(つまごい)高原に発し,渋川市で利根川に合流する川。白砂川,四万川,温(ぬる)川などが流入,中部に中之条盆地が開ける。酸性の川のために生物は生息せず,灌漑(かんがい)利用もできなかったが,1963年河水の中和が開始された。川沿いに吾妻線が通じ,中流に吾妻渓谷がある。
→関連項目吾妻[町]毒水利根川中之条[町]長野原[町]八ッ場ダム

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吾妻川」の意味・わかりやすい解説

吾妻川
あがつまがわ

群馬県中西部を流れる川。利根川(とねがわ)の支流で、長野県境の鳥居(とりい)峠(1362メートル)付近に源を発して東流し、渋川(しぶかわ)市で利根川に合する。延長76キロメートル。上・中流には峡谷がみられ関東耶馬渓(やばけい)の称がある吾妻峡谷(国指定名勝)が代表的。従来、長野原(ながのはら)町から下流は、魚もすまず、農業や発電にも利用されない「死の川」といわれていた。これは草津温泉からの湯川(ゆかわ)など強酸性河川の注入が原因であった。そこで1963年(昭和38)草津町に群馬県営の中和工場ができ、石灰の乳液を常時恒久的に湯川などに投入する水質改善を行い「よみがえる川」に変えた。これは全国にも例がなく、1968年国営に移管された。また沿岸は北関東電源地帯の一つで、水路式15の発電所で16万キロワットを発電している。

[村木定雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吾妻川」の意味・わかりやすい解説

吾妻川
あがつまがわ

群馬県北西部を東流する川。利根川の支流。全長 73.9km。長野,群馬両県境鳥居峠付近に源を発し,須川 (上流は白砂川) ,温川 (ぬるがわ) ,沼尾川などを合せ,渋川市で利根川に合流。須川の流入点から下流は酸性が強く,魚類も生息せず,灌漑用水にも利用できなかった。 1963年,吾妻川総合開発事業として,須川の支流の湯川沿いに中和工場を建設して水質を変えた。落差を利用した水路式発電所が設けられ,北関東の有力な電源地帯となっている。川原湯,四万,沢渡,草津などの温泉地と,吾妻渓谷をもつ観光地があり,川沿いに JR吾妻線が通る。

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