吹屋(読み)ふきや

精選版 日本国語大辞典 「吹屋」の意味・読み・例文・類語

ふき‐や【吹屋】

〘名〙
金属精錬したり鋳造したりする工場。また、その職人
※俳諧・独吟一日千句(1675)第五「折目高く見る白張の袖の月 けふ秋風の吹屋の亭主
大言をはく人。口から出まかせをいう人。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吹屋」の意味・わかりやすい解説

吹屋
ふきや

岡山県西部、高梁(たかはし)市成羽(なりわ)町の一地区。旧吹屋町。吉備(きび)高原上にあり、鉱山町として知られる。地名も金属を精錬・鋳造する意の吹屋に由来するものであろう。807年(大同2)銀山が発見され、戦国時代以降は銅山町として繁栄した。江戸時代には良質のべんがら顔料)を生産し吹屋べんがらとして知られた。1931年(昭和6)休山、その後再開したが、1972年(昭和47)閉山。かつては周辺の経済の中心として問屋が多く、江戸末から明治にかけての石州瓦(せきしゅうがわら)、塗込(ぬりごめ)造、べんがら格子からなる重厚な商家群が残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定、また県のふるさと村になっている。商人の家を利用した郷土館がある。

[由比浜省吾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吹屋」の意味・わかりやすい解説

吹屋
ふきや

岡山県西部,高梁市北部の地区。旧町名。 1955年成羽町に,2004年高梁市に編入吉備高原上に発達したかつての銅鉱山町。特に吉岡鉱山は約 1100年前に開発され,戦国時代には最も繁栄した。 1873年三菱鉱業の所有となり 1951年には年産約 1300tに達したが,現在は閉山。吹屋べんがらの生産で知られた。 1977年ふるさと村に指定。町並みには石州瓦 (せきしゅうがわら) ,紅穀格子 (べんがらごうし) など昔の面影が残り,重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「吹屋」の解説

吹屋
ふきや

(1)床屋(とこや)とも。近世鉱山における製錬所,また製錬業者。(2)大坂の銅精錬業者,またその精錬所(吹所(ふきしょ))。銅はすべて大坂へ廻送され南蛮吹技術をもつ銅吹屋仲間が精錬・鋳造して大半を長崎から輸出した。銅吹屋仲間の有力者は銅山を稼行し,銅座設置以前は輸出にたずさわり,幕末まで幕府の銅統制策を担った。銅精錬の際に生じるからみ(かす)や付着銅を集めて再精錬する業者を剥吹屋(はげふきや)という。(3)金座・銀座の貨幣鋳造所。

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世界大百科事典(旧版)内の吹屋の言及

【成羽[町]】より

…また畳糸製造工場,粉末冶金工場なども立地する。北部の吹屋(ふきや)は吉岡銅山とべんがら製造で発展した鉱山町で,古い家並みが残り,国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。周辺の石灰岩は三畳紀の化石を多く含むことで知られ,化石を展示する博物館がある。…

※「吹屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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