名対面(読み)なだいめん

精選版 日本国語大辞典 「名対面」の意味・読み・例文・類語

な‐だいめん【名対面】

〘名〙
① (「名謁」とも書く) 大内裏の宿直者、または、行幸行啓・御幸供奉の親王・公卿を点呼し、それぞれに特定の形式で名のらせること。宿直の場合おおむね亥の刻を定刻とするが、左近衛は亥・子両刻、右近衛は丑・寅両刻の巡回の度ごとに、行幸行啓・御幸ではおおむね還御の際に行なう。なお、近衛の宿直者の場合はもっぱら「宿直申(とのいもうし)」と称し、滝口の宿直者の場合は「宿直申」「問籍(もんじゃく)」ともいい、その他の所々の宿直者の場合は「問籍」ともいう。名謁(みょうえつ・なだめし)
※九暦‐逸文・天暦四年(950)八月一〇日「主殿署始供御湯殿、〈略〉事了奉仕名対面、如内裏儀、左先例也云々」
② 合戦の場で、互いに名乗りあうこと。
承久記(1240頃か)上「寄来ん敵の或は物具の毛に付き、又は、名対面に付いて」

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デジタル大辞泉 「名対面」の意味・読み・例文・類語

な‐だいめん【名対面】

宮中で、供奉ぐぶ宿直とのいの官人が、一定時刻に行われる点呼で名のること。おおむねの刻(午後10時)に行われた。名謁みょうえつ。宿直申し。問籍もんじゃく
戦場で互いに自分氏名を名のりあうこと。
「互ひに―して散々に射殺しぬる者もあり」〈盛衰記・四一〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「名対面」の意味・わかりやすい解説

名対面
なだいめん

名謁(みょうえつ)ともいう。禁中(皇居)での宿直・勤番において、出仕の状況を調べるために一定の時刻に点呼・指名すること。901年(延喜1)より始まるという。一般には亥(い)の刻(午後10時)に行われたが、左近衛(さこんえ)(右近衛(うこんえ)とともに、宮中・行幸の警護にあたった)は亥・子(ね)、右近衛は丑(うし)・寅(とら)の両刻に行われた。官の相違によって宿直申(とのいもうし)、問籍(もんじゃく)とも称された。行幸・御幸の供奉(ぐぶ)者に対しても還所の際に行われた。

[酒井信彦]

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世界大百科事典(旧版)内の名対面の言及

【滝口】より

…滝口は御所に宿直するが,昇殿は許されず,宿直する者は蔵人がとりつぎ,滝口はその姓名を名のる。これを宿直申(とのいもうし),問籍(もんじやく),名対面(なたいめん)などといった。天皇が退位して上皇となると,滝口の多くは引き続き院の武者所に武者として奉仕した。…

※「名対面」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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