同性パートナーシップ条例(読み)ドウセイパートナーシップジョウレイ

デジタル大辞泉 の解説

どうせいパートナーシップ‐じょうれい〔‐デウレイ〕【同性パートナーシップ条例】

同性の2名を婚姻に相当する関係と認める条例。平成27年(2015)4月に東京都渋谷区施行区内に住む20歳以上の同性カップルにパートナーシップ証明書を発行した。同性パートナー条例。→パートナーシップ制度

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 の解説

同性パートナーシップ条例

同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、お互いを「パートナー」とする証明書を発行することなどを定めた東京都渋谷区の条例。正式名称は「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」。2015年3月に成立し、同年4月1日に施行された。行政としては全国初の取り組みで、性的少数者(レズビアンゲイバイセクシャルトランスジェンダーなど)の権利を守る動きとして注目を集めている。
条例では、渋谷区在住の20歳以上の同性カップルを対象に、パートナーシップに関する証明(パートナーシップ証明)を行うことを明記区民と区内の事業者に対して、同性カップルなどへの最大限の配慮をするよう求めている。具体的には、パートナーがけがや病気で手術、入院した際の付き添いや、区営の家族向け住宅への入居などが可能となる。証明書の発行には、互いを後見人とする公正証書同居を証明する資料の提出が必要になるという。
区は条例に違反し、是正勧告などにも従わなかった場合には事業者名を公表するとしている。しかし区議などからは公表に慎重な声も出ており、区側は「公表は最終手段で、著しい人権侵害の場合のみ」としている。
条例は12年、区議会での区議からの質問を機に検討されるようになった。区は14年に有識者らによる検討委員会を発足、当事者の区民からのヒアリングなどを経て条例案をまとめ、15年の3月議会に提案した。条例案を巡っては、自民党区議などから「拙速だ」といった反対の声も挙がったが、採決の結果、賛成多数で可決された。
桑原敏武区長(当時)は、条例成立後の記者会見で「国政の課題に一石を投じる歴史的な事業になった。性的マイノリティを支援する環境づくりの第一歩」などと述べた。
15年4月現在、東京都世田谷区や兵庫県宝塚市、横浜市などでも同様の条例が検討されている。
同性カップルの場合、ケースバイケースだが、病院の付き添いや住居契約以外に、パートナーへの遺産相続ができない、生命保険の受取人に指定できない、といったデメリットがあるといわれている。証明書には法的拘束力はなく、法律上の夫婦とは認められないため、これらの課題を必ずしも解決できるわけではないが、同性カップルの権利を保障する後ろ盾となる効果が期待されている。
渋谷区の条例成立を受け、レズビアンを公表している元宝塚歌劇団花組の東小雪(あうら真輝)は「私も渋谷区に住んでいるので早くパートナーと取りにいきたい」と支持。女装家でタレントのミッツ・マングローブも「小さい一歩が踏み出せたことが素晴らしい」と歓迎している。また、条例の成立に関連し、安倍晋三首相は15年4月の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂の質問に答え、同性婚などについて「憲法との関係において結婚は両性の合意となっている。慎重に議論していくべき課題だ」と述べている。

(南 文枝 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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