同人雑誌(読み)どうにんざっし

精選版 日本国語大辞典 「同人雑誌」の意味・読み・例文・類語

どうにん‐ざっし【同人雑誌】

※彼女とゴミ箱(1931)〈一瀬直行〉脚本朗読会の流行「同人雑誌(ドウニンザッシ)の合評会や」

どうじん‐ざっし【同人雑誌】

〘名〙 主義、傾向などを同じくする人たちが共同で編集・発行する雑誌。どうにんざっし。同人誌
※あの頃の自分の事(1919)〈芥川龍之介〉一「近々出さうとしてゐる同人雑誌『新思潮』の話をした」

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デジタル大辞泉 「同人雑誌」の意味・読み・例文・類語

どうじん‐ざっし【同人雑誌】

主義・目的・傾向などを同じくする仲間が集まって編集・発行する雑誌。同人誌。どうにんざっし。
[類語]雑誌マガジン週刊誌月刊誌季刊誌ウイークリークオータリー

どうにん‐ざっし【同人雑誌】

どうじんざっし(同人雑誌)

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改訂新版 世界大百科事典 「同人雑誌」の意味・わかりやすい解説

同人雑誌 (どうじんざっし)

思想心情共通するもの同士が作品発表の場として経費を分担しあって執筆,編集する雑誌。書店で販売されるばあいでも営利を主目的とするのでなく,同人の作品の発表,さかのぼっては創作のための修練を主眼としている。また多人数を会員とする団体の機関誌とちがって,友情にもとづく仲間同士の協力によって刊行が維持されるので,小人数のグループのなかでもさらに執筆,編集,経営の力のある特定メンバーの関心と負担とによって誌齢が左右されることが多い。同人雑誌に掲載した作品が営利出版社の編集者に注目されたり,文学賞の候補とされたりして専業の作家,評論家となっていくというケースが日本では多いので,とくに小説や評論の自己訓練の場として同人雑誌が注目される。ただし,このほかにも一方では中央文壇と無縁に志操の場として刊行されている雑誌があり,他方では趣味の同好として長くつづいている雑誌がある。とくに短歌や俳句にはおびただしい数の結社がそれぞれに会誌を出しつづけているが,これらの雑誌は職業作家をめざすことがないのも一因となって同人雑誌と呼ばれることはない。その反対に,近年,学生や青少年のあいだで盛んに作られているSFや漫画のグループ誌のなかには,同人雑誌に近いものがある。

 日本の評論雑誌の祖というべき《明六雑誌》(1874創刊)は,明治初年の啓蒙主義的な学者・思想家たちの講演記録集だったから,同人雑誌の源をそこにみることもできる。小説発表の場としての同人雑誌は,尾崎紅葉,山田美妙らの《我楽多(がらくた)文庫》(1885創刊,当初は筆写回覧本)が最初である。文芸,社会思想がたがいに競い合った明治末年ごろから青年グループによる雑誌の刊行がさかんとなり,昭和初年には〈同人雑誌の全盛期〉(高見順)となった。第2次大戦の衰微期をはさんで保高(やすたか)徳蔵・みさ子がつづけた《文芸首都》(1933-69)は長期にわたる新人発掘の努力で名高い。なお,英米でリトル・マガジンと呼ばれる文芸雑誌の伝統は,非営利という特徴で同人雑誌と共通しているが,既成の作家や評論家の芸術主張を主にしていて,若手の習作などの場ではない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「同人雑誌」の意味・わかりやすい解説

同人雑誌
どうじんざっし

「どうにんざっし」ともいう。共通の主張あるいは目的をもった人々によって執筆,編集,発行される雑誌。市民層のなかに言論発表の場が要求されるようになった 18~19世紀に初めて登場したもので,イギリス,フランスをはじめ世界の各国でその刊行がみられる。特に 20世紀に入ってから登場したおびただしい数のリトル・マガジンには,サルトルの『タン・モデルヌ』 (1945創刊) や P.ソレルスらの『テル・ケル』 (52) のように,同人雑誌が多い。日本では森有礼,福沢諭吉ら明六社同人による『明六雑誌』 (1874~75) を嚆矢とする。文芸誌としては尾崎紅葉ら硯友社同人による『我楽多文庫』 (85~89) を先駆とし,『白樺』 (1910~23) ,『青鞜』 (11~16) などの例にみられるとおり,各時代の文学,言論界の動向に大きな影響を与えている。同人雑誌の発行は大正末期から盛んになり,第2次世界大戦により一時衰えたが,戦後再び活発化している。しかしながら,単に無名の同人をジャーナリズムへ送り出すことのみを目的とするものが多くなっている。

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百科事典マイペディア 「同人雑誌」の意味・わかりやすい解説

同人雑誌【どうじんざっし】

商業出版によらず,同好の人びと(同人)が集まって執筆・編集・発行をする小説・詩・短歌・俳句などの文芸雑誌や評論雑誌。《明六雑誌》《我楽多文庫》をはじめ《白樺》(白樺派)《青鞜》や戦後の《近代文学》など。一つ一つの発行部数は少ないが,各部門にわたり誌数はおびただしく,新人の習作発表,育成指導に大きな役割を果たしている。
→関連項目雑誌

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世界大百科事典(旧版)内の同人雑誌の言及

【雑誌】より

…日本の文学雑誌の最初というべき尾崎紅葉らの《我楽多文庫(がらくたぶんこ)》は,学生時代の彼が小説好きの友人たちと手書き作品を編んだ回覧雑誌として出発した。また,二つの世界大戦をはさむ時代の日本に,〈かつてない同人雑誌の盛行〉(高見順)がみられたことは,社会の変動期に青年層をはじめとする表現者たちの発表の場として自主刊行の雑誌がふさわしかったという事情によるものだった。また明治中期から数度の盛期を画しつつ増大を続けている短歌,俳句の結社同好誌は,さまざまの趣味雑誌が会員の関心と密接して長命を続けているその先駆といえるだろう。…

※「同人雑誌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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