20世紀日本人名事典 「吉田 富三」の解説
吉田 富三
ヨシダ トミゾウ
昭和期の病理学者,癌学者 東京大学教授;癌研究会癌研究所所長。
- 生年
- 明治36(1903)年2月10日
- 没年
- 昭和48(1973)年4月27日
- 出生地
- 福島県浅川村(現・浅川町)
- 学歴〔年〕
- 東京帝国大学医学部〔昭和2年〕卒
- 学位〔年〕
- 医学博士
- 主な受賞名〔年〕
- 日本学士院恩賜賞〔昭和11年・27年〕,朝日文化賞〔昭和26年〕,文化勲章〔昭和34年〕
- 経歴
- 大学卒業後、東京帝大病理学教室で無給副手をしたあと、昭和4年佐々木研究所の佐々木隆興の招きで同研究所に入所、病理学助手に。その後、杏雲堂病院院長を兼任しながら研究に従事し、11年アゾ化合物の経口投与により白ネズミに肝臓ガンを発生させる実験に成功、世界で初めて人工的に内臓にガンを作り出した。12年ドイツ留学。13年長崎医大教授となり、18年移植可能なネズミの腹水ガンを発見。19年東北帝大教授に転任。この腹水ガンは23年に日本癌学会で“吉田肉腫”と命名された。のちガンの化学療法の研究に着手し、東大薬学部の石館守三らと協力して26年抗ガン剤ナイロロミンを開発。27〜38年東大教授。28年より佐々木研究所所長兼任、38年より癌研究会癌研究所所長。日本学術会議会員、同副会長、日本医学協会会長、国際がん会議議長、日本対ガン協会常任理事などを歴任した。34年文化勲章受章。また37年には国語審議会委員として“漢字仮名交り文”を前提に議論を進めるよう要望する“吉田提案”を出し、後年当用漢字や仮名遣いの再検討を行うきっかけを作った。著書に「吉田富三医学論文集」(全3巻)がある。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報