吉川惟足(よしかわこれたり)(読み)よしかわこれたり

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

吉川惟足(よしかわこれたり)
よしかわこれたり
(1616―1695)

江戸初期の儒家神道(しんとう)家。「きっかわ」とも読み、名は「これたる」ともいう。吉川神道樹立。江戸の商家に元和(げんな)2年2月28日生まれる。本名尼崎屋五郎左衛門。和歌、読書を好み、36歳で鎌倉に住し、古典、神道書を考究、39歳で再度京都吉田家を訪ねてついに吉田神道奥義を受ける。諸侯に請われ神道を講じ、52歳で4代将軍徳川家綱(とくがわいえつな)に謁見、のち山崎闇斎(やまざきあんさい)が入門、67歳で5代将軍綱吉(つなよし)に招かれ、幕府神道方に任ぜられる(正式の出仕は子の従長(よりなが)からという)。諸侯のなかで会津保科正之(ほしなまさゆき)との交流は深く、正之が没した際、霊社号を授けて神葬祭を行ったことは有名である。惟足の所説の特色は、吉田神道の影響下にその仏教色を強く排除し、独自の朱子学的理念教養を加え、儒家神道の一典型をなしたこと、また吉田家および自家の奥義秘伝書を重視し、多く伝えたことにある。著書に『神道大意註』他がある。元禄(げんろく)7年11月16日没。79歳。

[小笠原春夫 2016年7月19日]

『平重道著『近世日本思想史研究』(1969・吉川弘文館)』

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