(読み)キツ(英語表記)stuttering

デジタル大辞泉 「吃」の意味・読み・例文・類語

きつ【吃】[漢字項目]

[音]キツ(漢) [訓]どもる
どもる。「吃音吃語
(「」と通用)受け入れる。「吃驚きっきょう吃水
難読吃逆しゃっくり吃驚びっくり

チー【吃】

《〈中国語〉》マージャンで、順子シュンツをつくるときに必要なパイ左隣の人が捨てたとき、「チー」と言ってその牌をとること。

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精選版 日本国語大辞典 「吃」の意味・読み・例文・類語

チー【吃】

〘名〙 (中国語から) マージャンで、上家(シャンチャ)(左隣りの競技者)から、順子(シュンツ)(三、四、五など数字の連続した三つの牌)の完成に必要な牌が捨てられたとき、自摸(ツーモー)の代わりに、その牌をもらってくること。また、その宣言。→ポン()
※ぽんこつ(1959‐60)〈阿川弘之秋深し「家のことほったらかしでメンバーに入って、チイだポンだとやってりゃ」

どもり【吃】

[1] 〘名〙 (動詞「どもる(吃)」の連用形名詞化) 器質的異常がないのに、声帯その他、発音に関係ある諸筋肉の強直性痙攣(けいれん)によって、声が痙攣状態になり、円滑な発音が行なわれないこと。また、その人。ことどもり。どどくり。ままなき。〔文明本節用集(室町中)〕
[2] 狂言。各流。妻に追われた吃りのあん太郎は、どもらないように謡(うたい)節で妻の非を仲裁人に訴える。

ども・る【吃】

〘自ラ五(四)〙 ものを言う時に、なめらかに声が出なくてつかえたり、同じ音を何度も繰り返したりする。
※応永本論語抄(1420)里仁第四「君子は物云時にむぐむぐとどもるやうにして其間に工夫して云也」

ども【吃】

〘名〙 「どもり(吃)」の略。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「吃」の意味・わかりやすい解説

吃 (どもり)
stuttering

吃音(きつおん)ともいう。〈どもる〉という現象は,話しことばの流れのうえにみられる異常な乱れであり,話そうとするときに音やことばを繰り返す(連発),音を引き伸ばす(引伸し),ことばがつまって出てこない(難発)という状態をいう。これらは多かれ少なかれだれでも経験することであるが,それが量的および質的に正常な話し方の範囲をこえた場合〈どもり〉という。どもりは初期には語音の繰返しで始まることが多く,それに引伸しや難発が加わってくる。そして,どもる時期とどもらない時期が交互に起こる,いわゆる周期(波)をもちながら,徐々に習慣化して,どもりやすい音や語,どもりやすい相手や場面などが固定してくる。また,どもる現象が進展するにつれて,話そうとするときに不安を感じて緊張したり,発話から逃れようとする回避反応が加わったりする。さらに,ことばを出そうとして顔をしかめたり,手足を動かすなどの随伴症状なども出現してくる。どもりが起こる年齢は2歳から9歳ころであり,2歳から4歳が最も多いといわれている。これらには自然治癒が多くみられるが,それは12歳ころまでが多く,その後は少ない。吃音者数は人口の1%前後といわれ,女性より男性に多くみられる。また,未開発社会においてはどもりは少ないといわれている。

従来,多くの研究者によって原因についてさまざまな説が提唱されているが,いまだに不明である。おもなものとしては,大脳半球優位支配やその他,大脳や神経などに素因があるとする器質説,精神神経症や欲求抑圧仮説などの神経症説,葛藤説や予期闘争説,診断原因説などの学習説などがあげられる。しかし,そのどれをとっても,どもりの全体像を説明し,治療しうるものとして確立しているものはない。しかし,これらの多くで心理的要因が重要視され,性格的に社会適応性や欲求不満耐性などが低い場合や,親子関係などが問題として指摘されている。

原因について種々いわれているように,治療方法もさまざまである。おもに行われているものには,環境調整,心理面への働きかけ,どもり症状そのものへの働きかけなどがある。これらは個々のどもり症状やその置かれている状況などにより適宜使い分けられる。一般的には,どもりの進展初期の段階,とくに年少児の場合には環境調整が行われる。家庭や幼稚園,学校などにおける言語環境を調整し,どもり症状を進展させると考えられる種々のストレスを減少させ,情緒的安定を図る。これはおもに養育者(母親)を通して働きかける間接的方法である。どもりを自覚し,不安をもつようになった場合には心理面への働きかけが行われる。親を通して,あるいは自由に感情表現のできる遊戯場面を通して,あるいは本人との面接を通して,感情的な葛藤を取り除き,どもりに対する態度を変容させることである。つまり,どもりを客観的にとらえて適切に対処できる態度を養成し,どもりに対する恐れや劣等感を取り除くことである。どもり症状が進展し,環境調整や間接的な取扱いだけではどもりの改善が望めない場合には,どもり症状自体を直接に治療対象とする働きかけが行われる。これは年長児以上に対して行われるものであり,楽な発話場面から困難な場面に徐々に慣れさせたり,発声発語を直接コントロールするなどの方法を用いて発話訓練を行い,どもり症状の減少を図るものである。そして,どもらない話し方を習得していくなかで,どもりに対する抵抗力や自信をつけさせる。また近年,薬剤の使用,聴覚のマスキング(遮へい)やフィードバックを使う方法,行動療法なども試みられている。
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