叶ない(読み)かなわない

精選版 日本国語大辞典 「叶ない」の意味・読み・例文・類語

かなわ【叶】=ない[=ぬ・=ず]

① やむを得ない。どうしようもない。思いどおりにならない。避けられない。
曾我物語(南北朝頃)一「かなわぬうき世のならひなれども、せめて、かないし十五にならんをまち給へかし」
浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)上「かなはぬ首尾に極って国へ下るがぢゃうならば、わしは見事に死まする」
② (形容詞動詞助詞「て(は)」「で(は)」の付いた形や、動詞に打消の助動詞および助詞「ば」の付いた形のあとに続けて) そういう状態ではいられない。そういうことをしてはたまらない。たえられない。
徒然草(1331頃)一四〇「朝夕なくてかなはざらん物こそあらめ、その外は何も持たでぞあらまほしき」
※虎明本狂言・水掛聟(室町末‐近世初)「見まはひでかなはぬ時分なれども、あなたこなたと致いておそなはってござる」
[補注](1)②の意味では、推量の意を添えた「かなふまじ(まい)」「かなはじ」も用いられる。
(2)丁寧表現では「かないません(ぬ)」となる。尾崎紅葉「多情多恨‐前」の「内は私一人のやうなもので、もうもう寂しくて敵(カナ)ひません」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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