[1] 〘名〙
① 見晴らしのきく建物。
物見台。また、高くそびえている建物。うてな。たかどの。高楼。
※枕(10C終)一四三「あはれなりつる所のさまかな。たいの前に植ゑられたりける
牡丹などのをかしきこと」 〔史記‐魯周公世家〕
※
令義解(718)公式「事大者奏弾。訖。留
レ台為
レ案」
③ 中国で、政府の役所である尚書省などをいう。
※
今昔(1120頃か)九「常に、台の使として四方の貴
(き)客有り」
④ 物をのせるための平たいもの。物をのせる器具の
総称。
※天徳四年内裏歌合(960)「殿上日記云〈略〉机四角以二金銀一作二柳四茎一。便為二覆台一也」
※わらんべ草(1660)五「我等聞及しは、
石橋の
だいのおきやう相違あり。七太夫時のは、〈略〉だいふたつならび」
⑤
食物をのせるもの。転じて、飲食物。食物。食事。
※蜻蛉(974頃)下「しばしありてたいなどまゐりたれば、すこしくひなどして」
⑥ 料理の品々を、
松竹梅などのめでたい飾りつけに盛り合わせたもの。他人に物を贈る場合や
祝儀などで用いられた。島台。とくに、
近世、遊里で、仕出し屋から
遊女屋へ運ばれてくる料理品をさすことが多い。台の物。
※
咄本・鹿の巻筆(1686)三「せいろう四十、また壱間の台
(ダイ)に
唐辛子をつみて、うへに三尺ほどなるつくりものの蛸のせ」
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉七「下駄の台は大抵皆桐にて造る」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「ゆくみの男、ばんとうの飯代りに来て台(ダイ)に座す」
⑨
旅客をのせて人が肩にかつぎ、川などを渡るのに用いる乗り物。
輦台(れんだい)。
※滑稽本・
東海道中膝栗毛(1802‐09)七「台越
(だいごし)といふをすると、川ごしの賃銭が四人まへに、かの台
(ダイ)の賃が壱人前出やす」
⑩ 周囲より一段と高く上部がほぼ平らな土地。台地。
※洒落本・多佳余宇辞(1780)「サア先生さんおらア此台(ダイ)の寺へ行て、弐百をかりてくるから」
⑪ 物ごとの基礎となるもの。きっかけとなるもの。土台。もと。したじ。
※俳諧・
続猿蓑(1698)春「穂は枯て台に花咲椿かな〈残香〉」
※歌舞伎・加賀見山再岩藤(骨寄せの岩藤)(1860)五幕「『それでもあのわたしには、幾ら上げてよいことやら』『知れざあ台(ダイ)を出しやせう、まづ多けりゃあ百貫さ』」
⑬ 商船・軍船を含む大型和船の船体両舷外側にある細長い縦通材。上棚外側に突出した各船梁または櫓床を連絡し、船体の強度を高めるための長大な
角材で、その上面に垣立をたてるところからいう。垣台。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
⑭ 賭け金をいくつかに分けて張るときにいう賭博用語か。
※黄表紙・莫切自根金生木(1785)中「『だいがぴんで、ひっきりがソレ六だ。よしか』『このばくちは一から六まで張れば損はねへが、そふいふ張りはみんなきらいだ』」
⑮ 角錐(かくすい)や円錐などを、底面に平行な平面で、上部を切り去ってできる立体。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
⑯ 一直線上に並ぶ点に対するその直線の称。
⑰ 関数 f(x1, x2, …, xn) を0にしない点 (x1, x2, …, xn) の集合の閉包のその関数に対する称。連続関数に対して用いられることが多く、その拡張概念に対しても準用されることがある。
[2] 東海道の神奈川と程ケ谷(保土ケ谷)の中間の高台をなしている地帯の通称。
※雑俳・柳多留‐六(1771)「夜の内に台迄行とこりをとり」
[3] 〘接尾〙
① 年齢や値段、時刻などのおおよその範囲を表わすのに用いる。
※俳諧・延享廿歌仙(1745)六「秋の夜の矢文放さば五六通 三十台と見られたい月〈平砂〉」
※朝飯(1975)〈中村光夫〉一「九時前に病院に行く。そのために鎌倉から七時台の電車にのる」
② 車両や機械などを数えるのに用いる。
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉七「馬車ならば、二輛(ダイ)も輪を並べて自由に出入のなる可き表門の扉は」
③ 容器に入れた食物などを数えるのに用いる。
※舜旧記‐元和五年(1619)一〇月一八日「赤飯行器一つ、豆腐一台持来る也」
④ 印刷や製本で、一度に印刷できるページ数(ふつう、一六ページあるいは三二ページ)を単位として数えるのに用いる。〔造本と印刷(1948)〕
[4] 〘語素〙 物の土台となっていることを表わす。
※不良児(1922)〈葛西善蔵〉「小型のニッケル台に金メッキの片側」