可笑記(読み)かしょうき

精選版 日本国語大辞典 「可笑記」の意味・読み・例文・類語

かしょうき カセウキ【可笑記】

江戸前期の仮名草子五巻。如儡子(にょらいし)作。寛永一九年(一六四二)刊。「徒然草」にならい、随筆風に種々の話題をとりあげて論ずる二八〇の章段より成る。浪人立場から見た警世的な批判は鋭く、社会・人生に対する感想意見にも見るべきものがある。浅井了意の「可笑記評判」は、本書の各章段に論評を加えている。

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デジタル大辞泉 「可笑記」の意味・読み・例文・類語

かしょうき〔カセウキ〕【可笑記】

仮名草子。5巻。如儡子じょらいし著。寛永19年(1642)刊。徒然草を模倣した俗文体の随筆で、本文280段から成る。

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改訂新版 世界大百科事典 「可笑記」の意味・わかりやすい解説

可笑記 (かしょうき)

仮名草子。如儡子(じよらいし)作。5巻。1636年(寛永13)成立。42年刊。《徒然草》にならって,約280条400項にわたり〈むかしさる人のいへるは〉の書出しで短文を収めた随筆集である。内容は文武儒仏,政治世俗,道徳宗教,故事見聞,笑話戯歌(ざれうた),自分の経験など多方面に及ぶが,特に小人しようじん)がへつらいで出世し正義清廉の賢士が不遇であるという世相慨嘆や,武士道がすたれ,役人が腐敗するという批判的話題が多い。儒教主義に立脚し,かつ当時増加しつつあった不遇な浪人の心情からの世相批判でもある。〈可笑〉という題名は,批判と自嘲をあわせ含むともとれる。俗語を駆使した平易な文体で,身の処し方を説き,〈教訓草子の母〉とも称せられて版を重ね,59年(万治2)刊本は絵入りとなった。この書に続いて,《可笑記評判》(浅井了意)や《可笑記跡追(あとおい)》が生まれ,また影響を受けた後続作も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「可笑記」の意味・わかりやすい解説

可笑記
かしょうき

江戸前期の仮名草子(かなぞうし)。「おかしき」とも読む(本文中にこの振り仮名がある)。如儡子(じょらいし)作。1642年(寛永19)刊。『徒然草(つれづれぐさ)』に倣った随筆書で、本文280段よりなる。その内容は修身経国に関する教訓を中心とし、古今の故事例話、仏法論、儒仏論、見聞談、小咄(こばなし)など多岐にわたっているが、作者の経験に即した武士生活に関する意見が主となり、藩政を支配する家老たちへの厳しい批判や、浪人生活の悲惨さを語っている点などがその特色となっている。

[田中 伸]

『田中伸他編『可笑記大成』(1974・笠間書院)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「可笑記」の意味・わかりやすい解説

可笑記
かしょうき

仮名草子如儡子 (にょらいし) 作。5巻。寛永 13 (1636) 年成立,同 19年刊。万治本は絵入り。約 280条の見聞,随想から成り,各条「昔さる人の云へるは」を冒頭とした随筆風の読み物で,『徒然草』の影響が強い。初期仮名草子にはまれな俗文体で,不遇で世に入れられぬ著者 (浪人) の憤慨,世相批判や,すたれゆく武士道についての慨嘆を述べている。仮名草子教訓物の最初の作品で,浅井了意の『可笑記評判』 (60) ,西鶴の『新可笑記』 (88) など後世に与えた影響は大きい。

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旺文社日本史事典 三訂版 「可笑記」の解説

可笑記
かしょうき

江戸前期,如儡子 (じよらいし) の仮名草子
1636年刊。5巻。

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