古画備考(読み)こがびこう

改訂新版 世界大百科事典 「古画備考」の意味・わかりやすい解説

古画備考 (こがびこう)

江戸末期に朝岡興禎(おきさだ)(1800-56)の著した日本画家伝。興禎は狩野栄信(ながのぶ)の次男。目にふれた古画をたんねんに臨写,それに伝記をつけたものが基礎となる。51巻のうち48巻までを古代以来の日本画家(約3500名)にあて,残りに長崎渡来の中国画家および朝鮮画家(約480名)を収める。巻五十に弘化2年(1845)起筆,巻一に嘉永3年(1850)の起筆とあり,このころ執筆とわかる。原本は東京芸術大学に保管され,太田謹増訂の刊本(1904)が流布している。堀直格の《扶桑名画伝》(1854)とともに,日本絵画史の基礎資料として,今日もその意義を失わない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古画備考」の意味・わかりやすい解説

古画備考
こがびこう

日本の古代から江戸時代末期にわたる絵画の作者に関する資料を集めた書物。著者朝岡興禎(おきさだ)(1800―56)は狩野栄信(かのうながのぶ)の次男で、幼時から父に画を学び、長じて人から鑑定を頼まれるとかならずその画を臨模し、落款(らっかん)印章を写し、余白に作者の系流略伝を付記することを常としたが、本書は後年それをもとに編集したもの。全編を帝室、廷臣武家釈門、松花堂流、詩人、和歌、連俳、茶、香、名画、浮世絵、巨勢(こせ)、宅磨(たくま)、住吉(すみよし)、土佐家、光悦流、狩野、英(はなぶさ)流、宮殿筆者、倭絵(やまとえ)などに分かち、長崎画人伝、朝鮮書画伝を付録に加えた。その自筆の稿本は東京芸術大学に伝わっているが、1904年(明治37)に帝室博物館絵事担任の太田謹が増訂して吉川弘文(こうぶん)館から刊行した四冊本が流布し、古画の鑑識、研究には欠かせない重要な資料である。

[永井信一]

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百科事典マイペディア 「古画備考」の意味・わかりやすい解説

古画備考【こがびこう】

狩野家の出である朝岡興禎(おきさだ)〔1800-1856〕がまとめた画家辞典。古代から江戸時代までの日本画人の伝記・作品に関する資料の集大成。長崎画人伝,高麗朝鮮書画伝を含めて全51巻。《扶桑名画伝》とともに古画研究の手引書として今なお高く評価されている。1904年増訂版を刊。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「古画備考」の意味・わかりやすい解説

古画備考
こがびこう

江戸時代末期,朝岡興禎 (おきさだ) が執筆した日本画,画家に関する辞典。全 51巻。自筆原本は東京芸術大学所蔵。太田謹増訂刊本 (1904) が流布。日本絵画史研究の基本的文献として貴重。

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世界大百科事典(旧版)内の古画備考の言及

【画論】より

…ほかに浮世絵師によるものとして,渓斎英泉の《無名翁随筆(増補浮世絵類考)》(1833)中にある〈大和絵師浮世絵之考〉は,さきの祐信の論旨を継いで,浮世絵師の立場を強く擁護し,粉本主義を批判している。大田南畝の《浮世絵類考》(1789ころ),朝岡興禎(おきさだ)の《古画備考》(1845‐50ころ),堀直格の《扶桑名画伝》(1854ころ)のような網羅的な画家伝も編集された。【辻 惟雄】。…

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